最新技術と運転する楽しさは共存できる。日産のe-POWERやe-Pedal等最先端の運転支援技術を存分に堪能してきた【取材】
日産の最新技術の粋を集めた「インテリジェント モビリティ」を体感できるブロガー向けのイベントが、横須賀の追浜にある日産の研究施設「GRANDRIVE」にて開催されました。ということで、今回はそちらの様子をレポートします。
率直なところ、ちょっと未来あったなと。そして印象と事実は大きく異なるなと。最新技術って安全面ばかりで「運転する楽しさ」がさっ引かれてしまうものばかりだと思ってたんですが、事実はそうでなかったです。これは…。
日産の「インテリジェントモビリティ」
このインテリジェントモビリティとは「もっと自身を持てるドライビングを」「もっと爽快な走りを」「もっとつながる便利さを」の3つの価値観の提供について、それぞれインテリジェントドライビング、インテリジェントパワー、インテリジェントインテグレーションという3項目に分かれて検討されています。
まずはインテリジェントドライビング。具体的にいうと自動運転技術についてです。たとえば今は2018年ですから、複数車線に対応した自動運転技術が実用化されようとしています。これ、どういうことかというと、高速道路など交差点がなく複数の車線がある道路にて、速度、車間距離、適切なレーンという3つの要素について、車のほうで判断して運転してくれるというもの。前の車についていくだけじゃ無くて、空いているレーンを判断するというのがすごいですね。車線変更なんて人間でも難しいのに。いや、人間には死角があるぶん、センサーを重視する自動運転のほうが向いているのでしょうか。
次のインテリジェントパワーは、いわゆるエンジンや燃料電池などを生かし、ガソリンだけでなく多様なエネルギーを用いた走行技術のこと…なんですが、けっこうビックリしたのが、バッテリーで走る、ガソリンで走る、水素で走る、バイトエタノールで走ると単純な話ではなくて、複数のものを組み合わせ、より効率的な世界を目指しているという点。特に今回はいま話題の「e-POWER」がフィーチャーされていたんですが、これは相当にビックリしますので、後々の紹介をお楽しみに。
最後のインテリジェントインテグレーションは大局的な考え方ですよね。都市計画にも関係してくると思うので、100年後を見据えて、みたいな話かと思います。
と、大きな柱の紹介がありましたが、なんといってもインテリジェントドライビングとパワーですよ。ここまで技術って進化してたんだ、みたいな世界を目の当たりするのは衝撃的でした。しかも正直、楽しかった…。
こ、こんなに楽しいのか新型リーフ
これまでのリーフと言えば水色でぼったりした形という印象でしたが、ずいぶんとスポーティーになりました。
あまりに印象が違うので、最初はリーフじゃなくて別の車だと思ってしまいました。日産の方に聞いたところ、やはりかなり意識したモデルチェンジになっているらしく、特にフロントグリルとボンネット周りが変わったので、かなり印象が異なるのでは、とのこと。
さて、そのリーフですが、モデルチェンジに際して「乗り心地」と「運転のしやすさ」がかなりチューニングされていました。
実際車内は静かですし、滑らかに一定のトルクで加速していく感じは、どこか飛行機やジェットコースターのような印象を受けます。
また今回の体験で最も驚いた要素がこの e-Pedal。単純にアクセルのオン・オフだけでかなりの運転をすることができるというわかりやすい機能なんですが、最初は単にブレーキも取り払ったワンペダル仕様だと思ってたんです。ところが実際にはブレーキとアクセルが両方ついているので、正直なところ、ちょっとテンション下がったんですよね…。あれ、そんなにすごいことじゃないのかもって。
ところがこのワンペダル運転をしてみると、まあ楽しいこと楽しいこと。何が良いって、アクセルオフしたときの「グッ」とフロントが沈んでブレーキかかる感覚が、マニュアル運転のギアを落として&エンブレ&ブレーキのそれにめちゃくちゃ近いんですよ。だからスラロームを運転するコースでは、進入前にローギアにしてブレーキを必要なだけ踏みフロントに過重をかけてから、ステアリングを切って…みたいな、理屈では良くわかってるけど難しいあのキレイな曲がり方が、容易にできちゃうわけです。しかもばたつかず。これ、まじすごい。すごすぎる。おまえはホットハッチなのかと。路面に吸い付いているのかと。
なにより速度に応じたブレーキングの感じが変わるところや、止まるときの「スッ」と抜く具合。これ、下手なドライバーだったとしても、誰もが80点くらいの運転できるようになっちゃう魔法の車でもあるんじゃないかなと。タクシーとか人を乗せて動いたり止まったりが多い車に搭載してほしいですね。この車で荒い運転って考えにくいです。タクシー酔いしちゃう人の救世主ですよ。
ブレーキは動力のこまかい制御で実現しているため、雪道でも安全という副次的効果も得られているんだそう。もちろん大雨の日なんかでも同じですね。
この小回りの違い!なんだ、ワインディングロード好きの僕に向いた技術だったのかという…。
ところで、なんでこんなにナチュラルなのか…というのを後から聞いて納得。どうやらe-Pedal開発部門には、日産のスポーツカー部門に深く携わっていた人がいたようで、とにかくチューニングにこだわったんだそう。そりゃー納得ですよ。そしてわかったんですよ。これ、延長線上にあるのはワンペダル運転のスポーツカーですね。
余談ですが、この新型リーフは加速感も普通車としてはかなりよくて、なめらか。しかも心地よい。聞けば、電気自動車のほうがトルクの調整が容易で、味付けしやすいんだとか。そりゃそうだ、モーター出力だけでコントロールできちゃいますもんね…。理想のトルクとスピードのグラフが、設定一つで実現できちゃう、それが電気自動車だったのか…というのはすごい発見でした。
エコな車って運転が楽しく無さそう…というのは、思い過ごしだったのか…。
いつどこからでもしっかり加速できる電気自動車。いいじゃん。
家に帰ってから知ったんですが、リーフにはNISMOモデルもあるんですね。これ、ターンパイクをはじめとした箱根で運転してみたさすぎる…。
「運転のアシスト」は楽しさを削ぐものではなかった
最新技術のひとつとして、高齢者や運転初心者などが時に起こしてしまう「踏み間違え」を防止する機能についても体験しました。
この「踏み間違え衝突防止アシスト機能」は、フロントウィンドウにつけられたカメラやフロントグリル・リアグリルにつけられたソナーで、静止もしくは低速走行中の自車と正面・後方にある静止物体との相対速度および距離をリアルタイムに計測。もし「いまアクセルを踏んだら/ブレーキを踏まなければぶつかる!」と判断したときには、警告音とともにアクセルを無効にし、場合によってはブレーキします。ポイントとしては、ほとんど全ての車でどうしても発生してしまう「死角」をフォローしていることですね。本当に踏み間違えているだけではなく、見えないから踏んじゃいそう!も防げるのはいいですねえ。
(こちら動画を撮ってあるのですが、編集が間に合ってないため、後日追加させてもらいます)
また、前の車を自動で追尾するプロパイロットも心地よかったですね。こちらはリーフで体験。
実際には走行中にプロパイロットボタンを押すと、フロントガラスにあるカメラやフロントグリルのセンサーを使って前の車を認識。自動的に速度に応じた車間距離を保ちます。すごいなと思ったのが、急に横入りしてきた車にもある程度は対応できるってことと、こちらもまた加速と減速が自然だったこと。今回体験したインテリジェントドライビングはどれも自然な味付けでビックリですね。
当然ですが、誰が乗っても同じような感じで追尾します。東名高速道路とかでこれが使えたら便利だろうなあと思いました。なお上限速度は115キロ。うーん、自分の車に搭載したい(ちなみに日産車ではありません)。
しかも年内にはレーンチェンジにも対応ってことですからね…高速道路でも事故が起きやすいこのレーンチェンジをアシストしてくれるなら、ずいぶんと助かる人、増えるのでは。
プロパイロットパーキングについてもショッキングです。まず舗装してあって線が引いてある駐車場なら、自動的に車のほうで「ここに止めますか?」の候補を選んでくれます。それを選んで、最終的な運転の責任を持つための「パーキングボタン」を押している間に、自動で寸分ずれないところに車が停車される様子は、圧巻というか、気持ち悪ささえ感じるほど。切り返し7回以下で止められると判断した時に有効ということですが、その止めるための最短手の導き出し方がけっこうすごいです。これはいろいろなパーキングで試してみたくなっちゃう。
いろいろな大人の事情で、Pボタンを押し続けているときだけ動きます。難しいよね。このへん。
ちなみに砂利の上に紐で区切ってあるようなところは、自分で止める場所を設定する必要があります。と、聞いたところでピーンときました。これ、舗装路にきっちりじゃなくて、子供が降りる方を広く開けるとか、そういうことってできるんですか?と。
はい、できるんです。カスタマイズ可能なので、たとえば我が家なら左後ろに子供がチャイルドシートで乗ってますから、かならずそちらを広く開けてとめるわけですが、そんなことを車がやってくれるわけです。
素晴らしいのは、それを誰でもできるようにする技術ってことですよ。運転はスキルの世界だから、どうしても車庫入れが苦手な人もいるでしょう。僕も関東にきてその駐車場の難しさに驚いたものです。そしてそういう人も、必要に迫られて運転しなければならないときがあるはずです。
この必要に迫られているときというのは、小さい子供がいたり、年老いた親族がいたりと、運転に自信がなくても運転せざるを得ないような、そんな状況です。このプレッシャーのかかる運転で、最も大変な車庫入れがサポートできたら…聞けば車庫入れが嫌だから運転をしなくなる人というのも一定数いるようで、これは車好きが幸せになる機能なんだってわかりましたよ。
で、ここまで体験してわかったのは、僕はわりとあたまでっかちで、運転にテクノロジーが入ってきてサポートされると、いままで楽しくやってたファン・ドライビングが阻害されるというか、いやーそんなの僕いらないっすよーみたいな印象ばっかりだったんですが、違ってたんですよね。日産さん、もっともっとそういう人に体験してもらった方がいいですよ!
搭載人数で選ぶ車、ではない新型セレナe-POWER
さてさて、ひとしきりインテリジェントドライビングまわりで盛り上がってしまいましたが、本日の大きな柱の一つ、インテリジェントパワーの「e-POWER」も忘れてはいけません。
これ、良くわかってなかったんですが、かみくだくとこういうことでした。
・ガソリンは入れる。そのガソリンは発電機のために使う。発電機で溜めた電力を使ってモーターを動かし、車を走らせる。
わかりますか?ようは発電機を積んだ電気自動車、それが「e-POWER」の車です。
そんなことよく考えたな!と思ったら、このアイデア自体はとても古いものらしいです。ただ、発電効率と蓄電効率、モーターの仕事率が向上したことで民間でも使えるようになったんだそうですよ。
基本的には電気自動車の系譜なので、動きの質はリーフに近かったです。ただし大きく違うのが、静かな室内空間と、7人乗った上でさらにたくさん荷物を詰める居住性。
またバッテリーが床下に配されたことで低重化し、走りの機敏さにもつながっているんだとか。当然ですがリーフと同じく運転の味付けは気合いが入っている感じ。この手の車にありがちなトルク不足は感じません。というか、加速しつづけるミニバンって初体験かも。
ここも本音でいいますが、セレナクラスの車って、居住性というか、何人のれるかが重要で、走りの質とか、楽しさとかは二の次みたいな印象あったんですよね。例えば大学の頃の自動車好きだった友人がセレナ買ったら、そうかおまえも野に降りたな、家族をもったんだな…みたいな。あきらめちゃったか、みたいな。ごめんねセレナ。セレナ持っている方にも申し訳ない。
でもこのセレナ、けっこう良かったんですよね。普段ホットハッチに乗っている僕視点で、いままで乗ったことあるこのサイズの車としてはダントツに良かった。このサイズの車はモーター駆動が相性いいんでしょうね。あのぎっしり乗った時のトルク不足感も感じませんし、ああ、これが電気で走るってことなんだって発見でした。
ちなみにバッテリーが大容量化したので、そのぶん充電時間も長くなっているわけですが、同じ時間あたりの蓄電量はあきらかに新型が有利でした。あとへたりに対しても強いみたいですね。
いやー、ほんと勉強になりました。世界は進んでいるんだなあ。
のりおのまとめ
普段からマニュアルの車に乗っていると、エンジンをかけた以降の全ての操作が楽しみにつながっていたりします。加速のしかた、減速しての止まり方、交差点の曲がり方。いかに予測をして危険を回避するか。でも当然ですが、それを全ての人が楽しいと感じるわけではないと思うのです。前述のとおり、運転はスキルの世界なので。運転が「苦痛」って人もいますよね。
少しでも快適で安全性の高い運転の世界が体験できたら、その人にとっての運転感が変わるかもしれません。もしかしたら、がっくんブレーキになっちゃう人がインテリジェントパワーでスッと止まるブレーキを体感できたら、赤信号が楽しくなったり。駐車場が狭くて面倒だから車を出すことそのものをためらってしまう人が、プロパイロットパーキングで運転の回数が増えたり。
その昔、カーナビを売っていた時代に学んだことは「人はお金を出して製品を買うのではなく、体験を求めている」ということです。カーナビのセールストークとして「家族で出かける回数が増えるかもしれませんよ」という文句を見つけた僕は、自分でも驚くほどたくさんの実機を売ることができました。製品にとって大事なのは、未来を見せてあげることですよね。
「車で出かけることに、もっと前向きになれるよ。自動車の楽しさを再発見できるよ。」
日産の新しい技術は、そう語りかけているような気がしました。もっと早く体験しておけば良かったなあ。今回はお声かけいただきありがとうございました。
取材で撮影した写真はこちらです。
日産のインテリジェントモビリティ
日産|NISSAN INTELLIGENT MOBILITY
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