ブカマッシモ@門前仲町 ビステッカで肉を喰らう炎のトラットリア!うまい!また行きたい!
門前仲町に、話題のトラットリア「ブカ・マッシモ」がある。トラットリアとは、イタリア語でいう「大衆食堂」のこと。その名の通り、近所の人から仕事帰りのサラリーマンまで、多種多様な人が気軽に集い、日常的な食堂として愛されている店だった。個人的な感覚だが、こういう店にハズレは無い。
さて、このブカ・マッシモ、実は肉を喰らう店としても有名だ。いわゆる、イタリア語でいうビステッカ。ようはステーキのことだ。でもただのステーキではない。Tボーンステーキだ。アメリカンではない、イタリアンなTボーンステーキなのだ。そんなブカ・マッシモでの肉々しい食事をレポートしてみよう。
門前仲町駅から徒歩5分の裏路地に
このブカ・マッシモがあるのは、門前仲町駅の2番出口から、5分ほど歩いた裏路地。永大通りからは1本入ったところだ。一見するとケーキ店のような雰囲気もあるが、れっきとしたトラットリアである。大きなガラス張りでありながらも、背の高い植木で目隠ししているところなどは、雰囲気づくりとしてとても上手だ。
平日はディナーのみ。近所の人は0時まで楽しめる。土日はランチもやっているそうなので、今度はそっちにも顔を出したいところだ。月曜定休というところに、日曜夜のファミリーディナーでも使って欲しい!という心意気を感じる。
店内は明るくてとても居心地がいい。この日は平日の19時だったが、すでに店内にはいっぱいの人。まだオープンして1年と聞くが、完全に定着していることを感じる。
出入り自由のセラー。ワインは全体的にリーズナブルだ。
この「Succo」というリンゴジュースは特筆的なおいしさだった。日本の「葉とらず」より濃厚かも。
肉!ということでワインもいいが、さっぱりとリンゴジュースも悪くない。
僕はスパークリングで乾杯。600円台と大変にリーズナブル。
会がはじまると、おもむろに運ばれてきたのがこの自家製フォカッチャ。う、うまい。お世辞抜きに、めちゃくちゃうまい。もっちもち感と、塩気が絶妙すぎる。無理を言ってテイクアウトさせてもらった。
この日は肉の会なので、前菜も肉である。こちら、天女の羽衣かと見間違うほどの薄さにスライスされた、たっぷりの生ハム(パルマ産生ハム 16ヶ月熟成)。
ここまで薄いのはあんまり食べたことが無いのだが、口の中でスッと消えるのと同時に、生ハムの風味だけ残るのはなんとも不思議な体験。いくらでも食べられてしまう予感。これは絶対に頼んだ方がいい。
少し暖かいものもおなかにいれたいよね、ということでトリッパを(フィレンツェ風牛トリッパの煮込みグラタン仕立て)。先ほどのフォカッチャとの相性がすごい…。
と、ここで厨房からすごい音が。ドンドンドン!その音の正体は…これである!
オーナーシェフの大沼さんが、巨大な鉈状の包丁で肉塊をさばいている…。
当然だが、この肉が今回我々のテーブルに並ぶ肉である。牛、豚、羊と3種類をオーダーしたのだが、牛だけでも1.2キロある。ちなみにこちらのビステッカでは、800gから100g単位で注文ができる。この日は6人だった上に3種類も頼むので1.2キロに落ち着いたが、ぜひ2キロ以上にも挑戦してみて欲しい。それにしても見事な肉。ブラックアンガス牛になるそう。
手前に豚も並べたところ。実はこの豚がものすごく希少性の高い「遊ぶた(ゆうぶた)」というもので、年間数百頭しか生産されないそう。
聞けば聞くほど驚きのこの遊ぶた。実は約2年の飼育期間を経て出荷されるという、少しでもその仕組みをしっていれば仰天の食肉だった。通常、豚肉は6ヶ月ほどの飼育期間を経て、体重100キロ弱くらいのサイズに育てられ、出荷される。これは、このサイクルでの出荷が最も畜産業に適しているからだ。もちろん味が悪いわけではないが、遊ぶた飼育者の考えによれば、これは「まだ成長段階すぎる」ということになるそう。
事実、遊ぶたは12ヶ月以上をかけ、しっかりと成熟した状態で出荷される。このとき、豚は体重200キロを超える。これだけ大きな豚になると出荷処理をするのも大変だし、輸送コストもかかるだろう。それ以上に飼育コストがばかにならないと考えられる。ちなみにこの遊ぶた、北海道の大地で、地産地消の農作物だけを食べて育つそう。人間の消費残しではなく、きちんと飼料のために育てられた農作物を食べるので、豚の肉質、脂質が段違いに良いとのことだ。気になる味は???この後の続きを読んで確認してほしい。
見事な肉のマッターホルン。果たして登頂できるのか?
どこまでも広がる遊ぶたの美しさ。
さて、ここからが調理の見せ場、「焼き」になる。
といってもブカ・マッシモでの焼きは大変に豪快な「直火焼き」で、オープンキッチンにてじわじわと焼き上げていくスタイルだ。
勝手に「炎のトラットリア」などと呼ばせてもらったが、たぶん来ていただければ納得していただけるだろう。
肉が育っていくのを眺めるのもよし。気にせず他の料理を食べ続けるも良し。
気がつけばワインボトルが空いていた。
火から外された後ろの肉はいわゆる「休んでいる」状態だろう。この方法だとじっくりと中に火が通っていくので、見事な焼き具合のビステッカが期待される。もちろん直火により、表面はカリカリに。肉汁を逃さないシンプルだが効果的な調理法である。まさかイタリアンでこんなに豪快な調理を見るとは!と思ったが、そうなのだ、ここはトラットリアなのだ。大衆食堂なのだ。
しばし、肉を待つ。カトラリーもイタリアのものを仕入れるなど、細部にまでこだわりが。
肉の成長を、目を細めながら眺める。
待つ。
飲んで待つ。
楽しく会話する。
そうして届いたのが、このビステッカたちだ。
美しいビステッカを喰らう
惜しげも無く披露してしまったが、こちらが完成した遊ぶたのビステッカ。フィレンツェの正当派なビステッカは炭火で豪快に焼き、中は血が滴るような色!とのことなので、まさしくこれこそが「ザ・ビステッカ」なのだろう。
遊ぶたの見た目は想像以上に牛っぽい仕上がり。これこそがこの品種の特徴なのだろう。
特筆すべきはその脂身だ。いままで豚肉の脂身は、ラード感に甘みともったり感が特徴だと思っていたし、それが最良のものだと考えていた。
しかし、遊ぶたのこれはどうだろう。想像を遥かに超えるほど軽くさっぱりとした味わいに、限りなくラード感がない。とはいえ、豚肉のあの甘さはしっかりと感じられる。すごい。こんな豚肉、食べたことが無い。思えば牛肉以上に豚肉は銘柄を食べたことがあるわけだが、この味わいは本当にはじめて。
そしてこの赤身。豚肉と牛肉の中間に近しい味わいで、くどくなってたくさん食べられないことも多い「トンテキ」とは異なり、いくらでも食べられてしまいそう。そうか、これこそがこの遊ぶたをビステッカにした理由だったのか!というほどに、ステーキ向きの豚肉である。この豚肉を食べるためだけに来てもいいぞ、ここ。
と、遊ぶたに感動している中で運ばれてきたのがこちら、ブラックアンガス牛のステーキ。実に1.2キロだ。表面はカリカリに、中は血の滴るほどに。こちらも正当派のビステッカらしい見た目である。もうこの後肉についてしか語らないので先に伝えておくと、実は付け合わせのポテトがカリッカリでめちゃくちゃうまい。これ、単品で頼みたいほど。
この色。輝き。嬉しくてつい開放で撮影してしまった。だって、輝かせたいじゃ無い、肉汁。
正直に言わせてもらうと、限りなく白米が欲しくなってしまった。しかし、グッとこらえ、あのめちゃくちゃおいしいフォカッチャと合わせてほうばる。塩気ともっちりかんのあるフォカッチャと、甘みと香ばしさのある牛肉があいまって…これは…幸せすぎる。あふれる肉汁。すべて受け止めるフォカッチャ。噛む事に、口の中で味わいが変わっていく。
というかこれ、Tボーンステーキである。TボーンステーキがTボーンであるゆえんは、骨の周りがもっとも美味だからだ。そしてステーキといえばのアンガスビーフ。期待を裏切るわけが無いのだ。
気がつけば1.2キロのビステッカは一瞬で消え去った。1人400gでも余裕でいけそう、それがブカ・マッシモのビステッカだった。ありがとうブカ・マッシモ。来て良かったよ、ブカ・マッシモ。
とまったりしかけたところで到着したのが、この日の〆、羊肉のビステッカ「オーストラリア骨付仔羊ロース炭火焼き」だ。
ふぉおおおお…。
いちばん美味しいところが来た。骨と骨の間である。
取り分けてもらうとこんな感じ。
テラッテラ、である。
良い意味での羊っぽさが残っていて、ああ、ラム食べたな…と実感できる、いいビステッカだ。特に羊の場合、臭みをなんとかしようとソースをかけてしまう場合があるが、このビステッカは塩とコショウだけでいい。もしくは、オリーブオイル。それだけで極上のイタリアンビステッカがここに。
そりゃ、かぶりつく(特別出演:ゆきふるのごうくん)
いやー、なんて幸せなんだろう。イタリアンでここまで肉を食べたのは初めて、へたをしたら、焼肉店に行くよりも、鉄板焼きの店に行くよりも、肉を食べている。
「肉を食いたい!」と思った時、どうしても頭には焼肉やステーキ、シュラスコの店を思い浮かべてしまうのだが、このブカ・マッシモもまた、肉を食うためのスペシャルな店として覚えておかなければいけない場所になった。
大 満 足、である。
…
ところが。
まだあった。
本格ドルチェタイム
まさかの延長線。ドルチェタイムだ。
正直言って申し訳ないが、1品に決められず、2品注文させてもらった。気になるものは1度で試す主義なのだ。
そうしてサーブしてもらったのがこちら、
まったくもって油断していたのだが、このティラミスがばかにうまい。それこそティラミスはイタリアンに行ったら必ず頼むメニューのひとつなのだが、シンプルにおいしいティラミスって、実は少ない。
一方でピスタチオとリモーネのジェラートは甘すぎず、素材の個性をたっぷりと楽しめるタイプ。特にリモーネはしめとしてのドルチェとしては最高の酸味。ハマりそう。
ほか、焦がしカラメルを使ったアフォガードや
濃厚かつ濃厚なゴルゴンゾーラのチーズケーキ(気が利くことにハチミツがかかっていて昇天しかかる)。
炎のトラットリアで、飲んで食べて騒いで。最高の時間を過ごさせていただいた。
のりおのまとめ
聞けば大沼シェフは、以前丸の内のほうでイタリアンの店の店長をやっていたとのこと。調べたらその店は「デリツィオーゾ フィレンツェ」だった。確かランチで行ったことがある。そうか、大沼シェフはこてこてのフィレンツェ・クオーコ(イタリア語でシェフ)だったわけだ。このクオリティにも納得である。
なおこの大沼シェフ、実は友人の同級生で、さいたま市出身。もともと気軽な店だが、より身近な感じを受けた。この素朴な感じも、トラットリアとして愛されている所以なのかもしれない。
なお今回の内容で(載っていない情報としてはワインを2本空けている)だいたい1人8,000円。これを高いと感じるか、安いととるか、それは食べて実際に確かめてみて欲しい。僕は「適正」と感じた。
トラットリア ブカ・マッシモ
東京都 江東区富岡1-24-11
平日:17時30〜24時
土日祝日:11時30〜15時、17時30〜23時
休日:月曜日
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