ストレート禁止?「知多」サントリーの新しいウイスキーはハイボール専用も見据えた香りで飲ませる1本
サントリーから久々に発売された新しい蒸溜所シリーズ「サントリーウイスキー 知多」。この知多を試し飲みする会に誘っていただきましたので、そちらのレポートをしておきたいと思います。
ざっくりお伝えしますと、珍しいほどにストレート向きでは無く、ハイボールにすることで香りを中心としたその才能が花開く、面白い1本でした。
知多蒸溜所とは?
正直申しまして、知多蒸溜所の存在は知りませんでした。国内の蒸溜所は訪問計画を立てているため、だいたい把握していたはずだったんですが、知多は漏れていましたねえ。
そもそも知多蒸溜所は、正しくは「サングレイン知多蒸溜所」という名称。サントリー直営ということではなく、子会社にあたります。1972年創業ということですでに43年もの歴史を誇る知多蒸溜所ですが、これまではブレンドのためのグレーンウイスキーを専門に作っていたことも有り、あまり日の目をあびることはありませんでした。
ところが2014年の11月にお試しで出した「シングルグレーンウイスキー 知多蒸溜所」がスマッシュヒット。昨今のウイスキーブームの後押しもあって、知多蒸溜所のラベルを付け発売になった、というのがいきさつのようです。
蒸溜所そのものは、山崎や白州とは違って、工場的な趣が強いそう。それもそのはず、グレーンウイスキーを中心に作っているのだとしたら、連続蒸溜式になりますので、スチルポットではなく金属の配管が目立つ、わいゆる「工場的」なそれになるわけですね。
そんな愛知県は知多半島からやってきたグレーンウイスキーが「知多」なのです。
風香るハイボールは最高
さて、そんなわけで早速知多の試飲です。場所は新橋の「ハイボールバー新橋1923」。レトロな雰囲気が目立っています。
こちらのお店では知多のハイボールをさっそく飲めるようです。
まずはサントリーのみなさんにすすめられるがままに知多ハイボールをグビッと。おお、さっぱりしてる。良い意味でウイスキーらしくない後味、それでいてほのかに甘い。そして確かに香りがいい。風香るハイボールとは言い得て妙。
色はうっすら金色だけど、ハイボールにするとほぼ透明。なんだろう、角ハイボールの香りのエッセンスを強めて、ボディを弱めた感じかな。こんなハイボールは飲んだことが無いので、ちょっと面白いかも。
そういえば知多のラベルは「響」と同じく書家の荻野丹雪氏が担当。ただならぬ気合いを感じます。
このヘアラインは風をイメージしたそうです。
と、そんなことを話しながらみんなでハイボールを飲んでいると…あれ?おかしい。もう3杯目???
そう、この知多を使ったハイボールは、良くも悪くもアルコール感と、よく初心者に敬遠される原因となるあの苦味をともなったウイスキー感がかぎりなく少ないのです。といってもアルコール度数は8〜10%くらいはあるわけで、これはなかなかに危険なお酒ですね。
ストレートではおすすめしない?
せっかくなので酔っ払う前にストレートで飲んでみよう…と頼んでみましたが、これは大失敗。おいしさには個人差があると思いますが、僕はウイスキーという酒の範疇でのおいしさを感じることができませんでした。ボディがない。ないんだよ〜。もちろんグレーンウイスキーなわけですが、それでもここまで個性を感じないストレートも珍しい(笑
ちなみにトワイスアップ(酒と水を1:1)くらいにするとかなりあり。甘み、香りともに前面に出てきて、かつこの濃さでも嫌みがまったくない。食前酒としても良さそうな感じです。本当に驚いたんですが、まるでストレート以外に調整されたかのようなウイスキーなんですねえ。
お酒、特にウイスキーなどのハードリカーって、加水してみるとその実力が良くわかります。1滴の水で花開くものから、トワイスアップがぴったりなものまで幅広くありますが、加水をどっしり受け止めて、自分なりの答えを返せるお酒こそ良いお酒なんだろうな、と僕は思っています。ちなみに高いモルトをストレートで飲んだ後は、グラスの底に残る1滴のウイスキーに1滴水を垂らして、香りを楽しむのが好きだったりします。かなりいいので、お試しあれ。
話がそれましたが、「知多」は確かにその答えを返せるお酒です。これは間違い無い。でもストレートではいまいち。なんだこれ。こんなお酒がいまだかつてあっただろうか(笑
和食に合わせてみたい初のウイスキー
さて、こうなってくると、じゃあ何の料理に合わせたら良いのかな?ということを考えるわけですが、まず間違い無く和食、それも薄味の京料理などが良いんじゃないかなと。このハイボールは料理の味も香りも邪魔しない。とはいえ、一度口の中をリセットするのには最適の味とのどごしをしている。食前でよし、食中でよし。いまだかつてこんなに和食と合わせられるウイスキーはなかったんじゃないかな。
実は毎年京都に行って、いわゆる京料理のお店にもいくわけですが、日本酒以外に「これ!」というお酒を見つけられなかったんですよね。日本酒は食中酒にはいいんだけど、食前酒にはちょっと強い。そんなピースの穴を、このハイボールは埋めてしまうかも。
サントリーさん、いまから京都にフル営業かけるべきですよこれは…!
ということで、2次会は「EDOGIN」さんに行きまして、和食との見事なマリアージュを楽しみました。間違い無し!
のりおのまとめ
ウイスキーはストレート原理主義者の僕からすると、若干邪道でな1本ではあります。しかし、これからのウイスキーの世界を広げていくのにあたっては、とても期待できる逸品なのでは、と思わされました。ただひとつ難をいうなら、値段かな。山崎、白州と同じ値段で並べたとき、果たして知多を選ぶ人がどれくらいいるのか。そこがこのウイスキーの勝負の分かれ目なのかなと思いました。
それにしてもなあ。香りで飲むハイボール。新しい。9月27日(日)までは六本木ヒルズでイベント「風香るラウンジ」をやっているそうですし(下記リンク参照)、サントリーウイスキーのサイトに飲めるお店もまとまってますので、ぜひ1度お試しあれ。
サントリーウイスキー知多 風香るラウンジ
もしかしたら10年後には、知多から入ったウイスキー愛好家がたくさん増えているかもしれません。
関連リンク
他のウイスキーに関する話題はこちら。
ウイスキー [エアロプレイン]