白州蒸溜所を訪ねて(後編)-すごいハイボールも作れます-
AMNさんのイベント「シングルモルト探究セミナー」レポートの後編です。長くてすみません〜。さあ、ついに白州蒸溜所の施設内に入ります。ドアを前にして、漂うのは…あの麦の発酵した香り。うおお、酒に弱い人ならここで酔っちゃうぜーって感じの建物の中にはいったい!?
前編を読まれましたか?
お時間があれば前編からどうぞ。見学の内容はこの後篇に凝縮されていますので、こちらだけでも大丈夫だと思います。
まずは麦の仕込み(糖化)と発酵!
まず最初に見せていただいたのは、仕込み・発酵の工程を行う蒸溜所。建物の中は前述のとおり麦の発酵した香りでいっぱいです。麦味の強い酒かす…といってもわかりませんよね。すごくデフォルメすると、酒かす(もしくは甘酒)をビールで割ったような香りです。
場内に入ってまず最初に目に飛び込んできたのが、巨大な仕込み槽。ここでゴミを取り除き、麦芽を糖化させます。
お次は発酵槽。白州(むしろサントリー)が独特なのは、この発酵槽に木樽を使っているところ。こうすることで、森の乳酸菌を取り込むことができ、まろやかな仕上がりになるそうです。ちなみにスコットランドなど、海外ではステンレス樽が普通です。
樽のうちいくつかは中が見えるようになっていまして、2日目や3日目の発行のものを覗くことができました。中ではクリーム状の液体がかくはんされ続けています。
次に蒸留!
次の建物は蒸留棟。巨大な窯でニューポット(アルコール成分約70%越え)を1200度の直火で蒸留します。これにより、香ばしい香成分が生まれるとのこと。僕の中で蒸溜所といえば、この絵ですね!左の大きい物が1度目用の、右の小さい物が2度目用の蒸留装置です。
蒸留を見せていただいたところで、次は熟成…となるのですが、なんとなんと、このセミナーでは「リチャー」を見せていただけるとのこと!マジですかー!ひゃっほう!!
リチャーの神業を目撃する
リチャーとは、ウイスキーを熟成させる樽の中を焼く作業。というのも、長年使ってきた樽はウイスキーを熟成させる力が落ち込んでくるからです。炎でアルコール成分を飛ばし、表面を焦がすことで再び熟成させる力を取り戻すのです。ちなみに「リ・チャー」の「リ」は再び、「チャー」は焦がす、という意味です。勉強になりますね(笑
さてさて、ではこの作業の何が神業かと申しますと…それはこの炎の消し方にあります。皆さんはどうやって消すと思いますか?水をかけまくって消火?蓋をする?転がす?二酸化炭素を吹き付ける??それとも??
正解は・・・なんとたったひとすくいの水で消す、なのです。
この燃え盛る炎にひしゃくの水を1杯「エイヤッ!」と投げつけることで、水蒸気爆発をおこし、その水蒸気によって火を消すのです。そういえば森林火災なんかもこの方法で消すと聞いたことがあったりなかったり。
見事に消えました。すごすぎ。これは動画で撮ったほうがよかったですねぇ。大失敗です。リチャーされた樽からはなんとも言えない良い香りがします。まさに「生き返った」という感じですね。この作業がどういった経緯で考え出されたのか非常にきになりましたが、質問し忘れてしまいました。
ところでこのリチャー、やはり中に入っていたウイスキーや木の特性により、樽1つ1つで燃え方が違うとのこと。そんな樽を長年の経験と勘でリチャーするのですから、やはり職人の方は素晴らしいですね…。
さあ、熟成しよう
リチャーで衝撃を受けた後は、再びバス移動で熟成棟を見学させてもらいます。ウイスキーにおいて、人間ができるのは樽に仕込むまで。あとは環境と時間だけがウイスキーを育てるのです。つまり、この作業でウイスキーの個性がきまるんですね。不思議なことに、同じ原料、同じ樽材、同じ時間のウイスキーでも、樽ごとに味が違うんですよねぇ。
白州では一番古い物がこの1973年に樽詰めされたものだとか。樽材は定番の「ホワイトオーク」もしくは日本独自の「みずなら」だそうです。ちなみに樽材が同じでも、ウイスキーの前に詰めていたものが「バーボン」だったり「シェリー」だったりすると、ウイスキーの味は大きく異なってきます。このあたりもこのお酒が面白いところですね。
樽が場内ところ狭しと並びます。空調などの類は一切入らず、自然の温度管理にまかせたままだそうです。ちなみにガラスの向こうは「樽買い」によるオーナーズカスクのゾーン。モルトウイスキー好きならばいつかは買ってみたい夢の商品です。
ああ、買ってみたい。最近は息子や孫の引き出物にする人も多いそうですよ。パッケージはある程度カスタマイズが効くとのこと。宝くじが当たったら間違いなく買いますね。
白州蒸溜所の小ネタ
ウイスキーの樽でリチャーされないものはどうなるのか?その答えはこれ。そう、場内のプランターとして第二の人生を始めるのです。もちろん他の用途に用いられることもあるそうですが、なんだか微笑ましい風景ですね。
見学のあとはテイスティング大会(おつまみ編)
ウイスキーのできる工程を学んだあとは、実際のウイスキーを楽しみます。今回のセミナーではサントリーの担当者の方が厳選した「おつまみ」とともに、どこかで聞いたことのあるような「すごいハイボール」の作り方を伝授してもらえます。また、6種類のモルトを飲み比べ、テイスティングすることまでできてしまいます。こんなに楽しいイベントでよいのでしょーか!?
ちなみに今回用意されたおつまみは「月瓶」「おかき」「かりんとう」「アーモンド和菓子」そして驚きの「黒豆」です。
結論から言いますと、この黒豆がうまい。下手な干しブドウなんかよりよっぽどうまいです。もちろん黒豆の味にも左右されるところはあるでしょうけど、間違いなく新たな発見です。素晴らしい提案だと思いました。
テイスティング大会(飲み比べ編)
そして次は6種類のシングルモルトを飲み比べます。今回用意されたのは、白州の10、12、18年と山崎の10、12、18年。この中でも白州18年ははじめて飲みます。
それぞれのお酒の色の違いをお楽しみ下さい。
どうです?熟成年数や種類によってずいぶん色が違うことに気がついていただけたでしょうか。もちろん味もかなり違ってきます。基本的に白秋はスッキリ、山崎はコッテリといった感じ。熟成年数が増すごとに樽材の特性が強く感じられるようになり、甘くなったり、ドライになったり、さらには果実のような香りへ変化したりします。まさにウイスキーは樽の中で生きているんですね。
すごいハイボールの作り方
会場が最も沸いたのが、この「すごいハイボール」の作り方が紹介されたとき。なんだか「はてな」な息吹を感じるネーミングですが、担当の方によれば「ほんと偶然です」とのこと。
作り方はと言えば…
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グラスに氷を一杯に入れて冷やします
このとき、マドラーで氷を回すと良いですね。氷を回すときは、マドラーを氷とグラスの壁の間に入れ、音がしないように静かに回しましょう。 -
しっかり冷やしたウイスキーを適量(シングルフィンガーかダブルフィンガー弱くらい=指を横に倒して1本〜2本分くらいってことです)注ぎ、きりりと冷えた ソーダを加えます。このときウイスキー1に対しソーダ3、つまり1:3がベストの割合だとのこと。
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炭酸ガスが逃げてしまわないように、マドラーでタテに1回まぜます。
これだけ、です。これだけで驚くほどおいしいハイボールが完成します。飲んでみたところ、確かに抜群にうまかったです。これで「モルトスパークリング(コグレさん命名)」なんてオシャレな名前だったなら、若者にも流行りそうです。
最後にはイチノセさんと質疑応答
最後にマネージャーでもあるイチノセさん(一ノ瀬さん、ということにしておきます)と30分ばかしの質疑応答。またこの一ノ瀬さんが職人気質で、自信と誇りを持って仕事をしていることがビンビン伝わってくるんですよね。間違いなくこの方と飲みに行ったら楽しいはずです。30分たらずで参加者のみんなが心を奪われたんじゃないでしょうか…。
ちなみに自分のした質問だけ掲載しておきますと…。
アイラの塩けに当たるような、日本独特の味はありますか?
これはまだまだ蒸溜所の数が少ないこともあり、そこまでの味の分化は進んでいないとのことでした。
オーナーズカスクに当たりはずれはないのですか?
オーナーズカスクは超厳選されたもので、絶対にはずれない、とのことです。ますます買うしか…!
日本版のボトラーズはないのですか?
残念ながらまだないとのこと。ちなみにボトラーズとは、原酒だけを購入し、買い付けた人が樽に詰めて熟成させたもののこと。これがまた個性が出るんですよね。
おまけ
最後に余った時間でウイスキー博物館に寄って今回は終了!となりました。ちなみに帰りのバスでは酒盛りが行われましたとさ(笑
サントリーの皆様と参加者の皆様に感謝!個人的にもまた行きたいな。
おまけ2
当日のスライド全写真を含む、記事でも未公開の写真入りのフォトセットはこちらから。
びっくりしたこと
驚いたことに、イベント中にサントリーの方がブログを更新していました。すごいリアルタイム性とバイタリティです。ビックリしました。
参考リンク
→ すごいハイボールを作るためのプレミアム・ソーダはこちらから
参加者のレポート
→ [AMN]サントリー「時が育むシングルモルトの魅力講座」体験イベントレポート 「すごいハイボールの作り方」付き@煩悩是道場
→ 「シングルモルトウイスキーセミナー(サントリー白州蒸溜所)」体験イベントに参加してきました。@POLAR BEAR BLOG
→ サントリー「白州蒸溜所」に行ってきた1:プロローグ@fuuri.net
→ 属人的な職人の技が会社のブランドを支える〜「シングルモルトウイスキーセミナー」体験イベントレポート@F’s Garage
→ 森の中の蒸溜所: サントリー白州蒸溜所を社会見学@dh memoranda
→ サントリー ウィスキー 白州イベント参加メモ@kamikura.com Blog
→ [を] シングルモルトウイスキーセミナー体験イベント@白州蒸溜所@たつをのChangeLog
→ 白州で教わった、日本には日本ならではのやり方があると言うこと。@tokuriki.com
→ 『時が育むシングルモルトの魅力講座』に参加した。知らないことは損だった。。。@3_06-チェケラッ!
→ 「シングルモルトウイスキーセミナー(サントリー白州蒸溜所)」体験イベントにご参加いただき、ありがとうございました。@Agile Media Network
→ サントリーシングルモルト探求セミナー「時が育むシングルモルトの魅力講座」@一和一会
→ ーOOO-サントリー白州蒸溜所へ行ってきた@あんだんご ーOOO-
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