吉野家の「ねぎだく牛丼」でねぎが別添である事情をいろいろ考える
実は学生時代に吉野家で働いていたことがあるのりお 👍 です。今回吉野家から新メニューとして発売された「ねぎだく牛丼」について、いろいろと思うところや懐かしいことがあったので記事化しておきます。
「ねぎだく」は玄人向け隠しオプションだった
そもそも今回新メニューかされた「ねぎだく」は、築地店を発祥とする隠しオプション注文のひとつでした。例えばいまレギュラーメニューになっている「頭の大盛り(肉だけ大盛りの量、ごはんは並盛り量)」なんかも同様です。だから、僕が働いていた当時は「並、ねぎだくで」と言われたら普通に対応していたのですね。逆に「並、ねぎ抜きで」というオプションもありまして、この場合も対応していました。しかも追加料金無しです。
で、ここでポイントになるのが対応方法です。そのためには吉野家伝統の「盛り付け」について少し語らざるを得ません。今回のねぎだく復活のポイントもそこにありますので、少しだけお付き合いください。
「決め」が重要な吉野家の盛り付け
実は吉野家の牛丼は、特別なお玉を使って美しく盛り付ける、いわゆる「決め」というものが大変に重視されている商品です。実はこれが大変に難しい。そのため、鍋を担当することになる新人は、まずこのお玉の扱いならびに「決め」についてをレクチャーされます。穴あきお玉をほぼ水平に半回転させながら上下し、そのお玉の上で丼の形に肉とねぎをまとめていくのですが、当然この時には肉・ねぎ・タレの量およびバランスも問われます。新人はこのお玉まわしを覚えなければ鍋を担当することができないのですね。早く、美しく、そして適量で提供するのが吉野家の美学なのです。おそらくこれは今でも変わっていないはず。
(余談ですが、ちょうど1年ほど前、仕事で吉野家さんのイベントを担当することがありまして、その打ち合わせ時に久々にお玉を持ったら…まだけっこうできたので、技術って忘れないモノだなと我ながら感心しました)
さて、この盛り付け時、ねぎだく・ねぎぬきはどう対応していたのか?以下はあくまで僕がまだ吉野家でバイトをしていた2000年前後の話です。まずねぎだくですが、当時は2つの対応方法がありました。1つはお玉で盛り付ける際、最初からねぎを多めにまとめ1度で盛り付けてしまう方法です。そしてもう一つが、後からねぎだけを足して盛り付ける方法です。ただし実際には、ほとんどの人が後者の方法を採用してい気がします。なぜなら、前者の方法だとねぎが肉の下に埋もれてしまうこともあり、「ねぎだくなのに、ねぎが少ない」というクレームにつながる恐れがあったからです。
一方ねぎぬきはというと…ねぎを少なめに盛り付けつつ、最後にトングでねぎを取り除くという作業が必要でした。
このとき、僕の記憶が確かならば、このねぎだくはねぎのぶん肉が少なくなり(ルールだったかどうか覚えていませんが、そもそもお玉の中で「決める」盛り付け目分量が決まっているため、結果としてそうなりがち)、ねぎぬきはねぎの分の肉が補填されるわけでもないので、やはり牛丼としては少なく見えるという欠点がありました。また、ねぎだくが多く注文されると当然ながらねぎが足りなくなるため、ねぎだけを鍋で煮る必要があります。この時、当然ですがねぎのエキス分がタレに溶け込むので、タレ味が通常より甘くなりがちでした。しかもねぎ在庫だけが減ってしまうのは、店舗ごとの食材発注をよりいっそう難しくさせました。
そんなこともあって、ねぎだく・ねぎぬきのオーダーは、対応できないことになった…はずです。違っていたらすみません。
ところが、この復活劇ですよ。当時の問題点をどう解決したのか?そこにとても興味があった僕は、ねぎだく牛丼復活の翌日、吉野家に行ってみました。
納得の「別添」。ねぎだく牛丼はセルフ形式だった
ここまでの記述から、ねぎだくについては
・ねぎを追加するオペレーションが煩雑(提供スピードの低下)
・ねぎ追加によって肉が減る可能性(満足度の低下)
・鍋へのねぎ追加投入による味のブレ(提供クオリティおよび満足度の低下)
という問題があることがわかっています。そこへきての、このねぎだく牛丼…個人的には上記問題を解決したうえでなのかどうか、がとても気になっていました。
果たして答えは「やっぱりそうするよね」でした。端的にいうと、ねぎは別鍋調理・別皿提供だったのです。別調理によって、牛丼そのものの鍋に過剰なねぎが投入されるわけではなくなりますから、味のブレがなくなります。同時に、ねぎが煮込まれすぎる問題についても防げると言えそうです。別皿は、先に別皿へと盛り付けておき提供すれば良いだけなので、大量に注文されたとしてもオペレーションの遅延を防げます。別鍋・別皿提供によってオペレーションを簡単にし、かつ牛丼そのものの提供クオリティに影響を出さない方法となっていると理解しました。
お会計的にも単純明快で、ねぎだくは「オプション」扱いでした。つまり玉子やみそ汁と同列です。ただし1牛丼につき1ねぎだくしか頼めないようでしたので、ねぎだくだく丼みたいなものは難しいみたいですね。
のりおのまとめ
ということで、ねぎだく牛丼は、自分で盛り付けることでこのように完成となります。個人的にはいつものタレで煮込まれた、醤油色の(いつもの牛丼に入っている)ねぎが好きなんですが、この黄金色のねぎもそれはそれで有りかな、という感想でしたね。
吉野家は以前の牛丼のみ提供スタイルから、現在の定食やその他多数のオーダーに対応するスタイルへと変貌を遂げています。それであっても、人員は最低限の配置。オペレーションの効率化は避けられない問題です。そのため、こうしたサイドメニュー1つの追加ひとつであっても、オペレーションを中心とした様々な検討がなされたのだろうなと想像されます。今回の別皿提供は、正直なことをいうならば少し残念ですが、色々な事情を考えたら「現実的だよね」という結論になるのかなあとは思いました。
元バイトの1人として、これからも吉野家を応援しています。
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