【藤樹園】「海外は熱狂、市民は無関心」な盆栽聖地を変える! 登録10万超の配信者と若き園主の挑戦

外国人観光客がカメラを片手に熱狂しているのに、地元の私たちはその横を素通りしている——。 大宮区と北区の境目に、そんな不思議な場所があります。世界中の愛好家が「一生に一度は行きたい」と憧れる聖地「大宮盆栽村」です。
「名前は知ってるけど、行ったことはないし、行く機会もない」 現実問題、そう思う人も多いでしょう。しかし今、その現状を変えるべく、「直感で即移住したYouTuber(ユーチューバー)」と「遠縁の家業で継ぐつもりもなかった若き園主」の二人が革命を起こそうとしています。
ひとりは、日本で(世界で!?)最も古い盆栽教室を主宰する盆栽園「藤樹園(とうじゅえん)」の現園主である「廣田 敢太(ひろた かんた:以下、カンタ)」さん。もうひとりは、盆栽専門のYouTuberとして活躍する「田口真人(たぐち まさと:以下、田口)」さんです。
さいたま市の・・・いや、日本の誇る文化継承のため情熱をかける二人の想いとは・・・?
「衝撃」のあまり、翌月に東京から移住
「大盆栽まつりで盆栽を見た瞬間、直感したんです。『次の仕事はこれだ』って」
そう語るのは、チャンネル登録者数10万人超、日本最大級の盆栽専門YouTubeチャンネル『盆栽Q(ぼんさいきゅー)』を運営する田口さんです。

はじまりは数年前。かつて東京で働いていた田口さんは、ふらりと訪れた大宮で衝撃を受けました。完成された造形美、そこに流れる悠久の時間。その魅力に完全に取り憑かれ、なんと祭りの翌月には大宮への引っ越しを完了させていたのです。
しかし、住んでみて直面したのは「あまりに静かな聖地」という現実でした。 「こんなに素晴らしいコンテンツがあるのに、歩いている人が少ない。これは宝の持ち腐れじゃないか?」 そこで彼は、素人視点をあえて武器にし、盆栽の「わからない」を解き明かす動画を発信し始めました。
コンセプトは「世界一わかりやすい盆栽の動画」。 失敗も、悩みも、そして謎のベールに隠されていた盆栽園の姿も包み隠さず配信するそのスタイルは、厳格な盆栽の世界に「親しみやすさ」という風穴を開けました。何より、これまで知ることの難しかった「盆栽の始め方」「盆栽の育て方」「盆栽の楽しみ方」が動画で学べるようになったのです。現代メディアであるYouTubeと、伝統文化である盆栽とが、がっちり組み合った瞬間でした。
偶然が変えた運命と「イタリアで見た光景」の衝撃
その田口さんとタッグを組むのが、盆栽園「藤樹園」の園主、カンタさんです。いまでこそ園主をつとめるカンタさんですが、最初から園主を目指していたわけではありません。
先代藤樹園 園主とは遠縁であったカンタさんですが、子供の頃は「訪れた明確な覚えがない」ほどに盆栽園とは縁遠い生活を送っていました。
ところがあるとき、心機一転新しい仕事を探したカンタさんがたどり着いたのは、特に深い意図も無く紹介されたこの藤樹園の仕事でした。最初はバイトとして指示を守るだけでしたが、それがいつしか責任ある仕事となり、主体的に盆栽と盆栽園を見るように。そして知れば知るほどに「なんとかしたい」と湧き上がる業界の未来を想う気持ちが、ついには若くして園主になるという決断をさせました。

「イタリアに行った時、向こうでは盆栽が『生きがい』として生活に根付いているのを見ました。仕事以外の時間や緑がある生活を重視する欧州では、盆栽が受け入れられるのに長い時間は必要なかったようです。一方で、日本では業者が減り、高齢化が進んでいます。このままでは、いつか日本の盆栽文化が消えてしまうかもしれません」(カンタさん)
伝統を守ることの重圧と、新しい風を入れなければならない危機感。 田口さんとともに新しい試みに挑戦していくのは、必然的なことだったかもしれません。
盆栽園は「スタジアム」!?美術館感覚でふらっと来て
二人が目指すのは、サッカーで言えば「Jリーグ」のような世界です。 かつて一部の愛好家のものだったサッカーが、いつしか仲間や家族と観戦し、応援し、語り合う文化になったように、盆栽ももっと開かれた文化にしたい!という意気込みを、お二人からヒシヒシと感じます。
例えば平日はスマホの中のYouTube(盆栽Q)で試合を見て、週末はスタジアム(藤樹園)に行く。そんな感覚が、サッカーの街であるさいたま市民にはわかりやすいのかもしれません。思えば日本のサッカーは、数年前までごく一部の人の熱狂的な趣味でした。これはまるで今の盆栽のようではありませんか。
盆栽にとって「出会いの場」「きっかけ」を増やす活動はとても重要です。インターネット上の「盆栽Q」と、リアルな場である「藤樹園」。この二つを持つさいたま市は、聖地であること以上に、この盆栽文化を再び盛り上げる最高の環境となっています。オンラインとオフラインが交差する場所、それが藤樹園です。
カンタさんは笑って言います。「盆栽園(藤樹園)は開かれた場所なので、入園料も予約も不要です。とにかく気軽に盆栽園まで来て、自分なりの『かっこいい・かわいい推し盆栽』を見つけてくれるだけでいいと思っています。ここは美術館でもあり、直売所でもあります。運命の出会いがあれば、そのまま購入して持ち帰ることだって可能です。
最初は話しかけるのが恥ずかしかったりもしますよね。そんなときは『インターネットで記事を見て』と伝えてください。それで全てが通じます。訪れてくれた人は私たちが全力でサポートをしますから安心してください!」

さいたま市の「宝」を守るのは、あなたかもしれない
大宮駅からたった二駅(大宮公園駅)。閑静な住宅街で、数百年生きる木々が静かに呼吸をしている盆栽町と、盆栽園。それは、私たちがもっと誇っていい、さいたま市だけの宝物です。
平日はスマホで「盆栽Q」を眺め、週末は散歩がてら盆栽町へ。 そんな小さなアクションが、世界に誇るこの景色を未来に残すことに繋がります。まずは今週末、“世界の聖地”に足を踏み入れてみませんか?藤樹園があなたを待っています。散歩ついでに、まずは5分立ち寄るだけでもOKですよ!
藤樹園
埼玉県さいたま市北区盆栽町247
営業時間:8:00-17:00(変動あり)
休業日:毎週木曜日
公式Webサイト
