ザ・ピート!アードベッグ蒸溜所で規格外の試飲に挑む #夢見た英国文化
アイラ島ツアー3日目は、アードベッグ、ラフロイグ、そしてラガヴーリンの3蒸溜所を次々とめぐるという、僕にとってはまるで天国のような一日。まずは「ザ・ピート臭!」と言っても過言では無い、スモーキー番長のアードベッグ蒸溜所へと向かいます。
薄曇りのアードベッグ
この日の天気は小雨が止んだばかりの薄曇り。これこそアイラ!という天気ですね。ボウモアの宿から車で走ること30分ほど、アードベッグ蒸溜所に到着すると、一行を迎えるのはシンボルマークの冠されたスチルポットです。
そもそもこのアードベッグ蒸溜所を語る上では、その数奇な運命に触れざるを得ません。
1815年に設立されたこの蒸溜所からは、アイラ島でも随一のスモーキーフレーバーを誇るモルトが生産されてきました。今でこそ企画としてアードベッグを上回るスモーキーなモルトは存在しますが、スモーキーモルト、ピート臭モルトの代名詞として、今でもアードベッグを挙げる人は少なくないでしょう。また、アードベッグの名前は知らなくとも、バランタインの名前は知っている、という人もいることでしょう。そう、このアードベッグは「バランタイン魔法の7柱」と呼ばれる、同酒のキーモルトのひとつです。
このように重要なポジションであるアードベッグですが、悲しいことに、今日に至るまで何度も閉鎖の運命を辿っています。理由は様々と聞いていますが、とにかくアードベッグほどの蒸溜所でさえ閉鎖の憂き目に遭うところに、モルト界の難しさが垣間見えますよね。
そんなアードベッグが復活したのは1997年のこと。同じくモルトを生産するグレンモーレンジィ社によって買い取られた蒸溜所は、ボロボロの状態だったことが信じられないほどに改装され、その後2004年にモエ・ヘネシー・ディアジオによって再度買収され、今の姿になったんだそうです。
ただし!モエヘネシーは良くも悪くも信念を強く持つ会社。経営危機の頃に比べて様々な面でクオリティこそ改善されましたが、同社の意向を強く反映した蒸溜になっていることもまた事実であるそうです。このあたり、見学ツアーでさらっと言ってる(言ってたよね?)ところも面白いところ。
参考までにこちら、アードベッグの公式サイトより引用した復旧前の様子。ぼろっぼろです。電気のブレーカーボックスを修理できなくて靴箱にて代用していた話など、泣けてきますね…。
ちなみにアードベッグの意味は「小さな丘」となっています。
激しいピート臭を感じながら最先端の設備を見学
さて、前述のとおりこのアードベッグでは見学ツアーに参加したのですが、残念ながら内部の撮影は不可。実はこれ、アイラ島の蒸溜所ではけっこう珍しいことなんですよね。このあたりにもモエ・ヘネシーのポリシーが浸透してきている気がします。
とはいえ、グレンモーレンジィ社によって改装され、建てられたビジターセンターおよび蒸溜設備は、モエ・ヘネシーの手によってさらに美しく、お洒落に仕上げられており、見応えは十分。こちらの見学は「はずせない」ところであるのは間違いないでしょう。
見学中は常に強烈なピート臭が。もちろんアードベッグの最大の特徴ですからね、この匂いを嗅いでこその見学です。
内部はまったく新しいものになっていると思いきや、ほぼ昔の蒸溜を保っていて、見学路こそ整備されていますが機器などは古いままのように見えます。発酵槽なんかはかなりの年代物。モルトミルしたモルトを食べさせてくれるなど、サービス精神もあり。ちょっとネットを調べてみると2007年以前は普通に写真が撮れたようで、撮影禁止なのはやっぱりモエヘネシーのポリシーな気がしました。
さてアードベッグ蒸溜所の見学の白眉といえば間違い無くポットスチルでしょう。なんせ、2基しかありません(!)
つまりですね、初溜と再溜のための1基ずつしか、ポットスチルが無いわけです。そりゃ流通量少ないわけだよなあ。アードベッグ蒸溜所、ブレンドや製品の方向性は親会社の雰囲気を感じますが、少なくとも現場では昔ながらの心意気が息づいているような気がしました。
なんだかんだ言って、かの「ベリーヤング」は伝説的なおいしさでしたし、その後年数が進むにつれインパクトが弱くなった悲しさこそありましたが、蒸溜の腕は確かで、味も大変にまっとう。みんな色々と思うところはあるみたいですが、これから暗いニュースが増えるかと言えば、そんなことはないでしょう。なんせ、潰れない。安心です。
そんな資本が資本だからか、全体的にお洒落な雰囲気もありますね。
見学が終わると次はテイスティングです。
30分で5ショット。泥酔必至な驚異のテイスティング
さて、テイスティングルームに到着すると、いままで所内を案内してくれたおねーさんがおもむろに机にと着座。うわーなんかかっこいい感じて講義がはじまります。ところで目の前には5つのビンがございまして、もしかしてこれ、全部テイスティングなんて太っ腹な感じですか?
答えはYes。しかもテイスティングといいつつ、全て普通のワンショットでそそがれます。
贅沢すぎる!と思いますよね?僕もそう思いました。ただし、それが30〜40分で行われるものでなければ、です。ものすごいペースで5ショット飲むわけです。これはさすがにヨーロッパから参加の諸氏も真っ青ですよね。水をくれ、と何度も何度も言っていました(笑
テイスティングはとても良い感じ。加水にはスポイト代わりのストローが使えるなど本格的です。さすが蒸溜所のテイスティングですね。
さて矢継ぎ早なテイスティングが終了すると、次はランチです。そう、アードベッグはランチの食べられる数少ない蒸溜所のひとつなんです。キルホーマンもそうだったのですが、蒸溜所のランチはやたらにおいしい!さすが、なんですかね。アイラ島に来たらランチは絶対に蒸溜所でとったほうがいいですね。本気でおいしいです。
ランチ後は予算と相談しつつアードベッグの記念ボトルなどを買い、こちらでの行程は終了。次にラフロイグ蒸溜所を目指して、一行は再びリチャードのバスに戻るのでした。
まだまだつづく。
アイラ島の記事はこちらにまとまっています。
スペシャルサンクス
航空券と飛行機代をプレゼントという形で提供してくれたエクスペディアさん。
アイラツアーで便宜をはかって取材扱いにしていただいた英国政府観光庁さん。
さらにヒースローエクスプレスや特急などに乗れるブリットレイルパスを提供してくださったレイルヨーロッパさん。
スーツケースレンタルをモニターで提供してくれたアールワイレンタルさん。
そして海外での通信を一手に引き受けるモバイルルーターを提供してくれたグローバルWi-Fiさん。
最後に、ありがとうシルバーウィークですね。この連休がなければこの日程は考えられませんでした。仕事関係のみなさんにもありがとう!
なお、全て現物支給という形で提供していただいておりますんので、記事に対する対価はいただいていません。記事のほうは自由にいつもの調子で書かせていただこうと思っています。
では。
ディスカッション
コメント一覧
norioさま
7月にアイラ島に行きます。norioさまのサイト、読むたびに期待でいっぱいになります。エディンバラからレンタカーで移動し、ケナクレイグからポートエレンにフェリーで渡ります。ポートエレンの到着が20:00過ぎなのでポートエレンに泊まろうかと思っていますが、ポートエレンの夜はレストランやパブは営業していないのでしょうか?
Ardbegが一番好きなので見学しようと思っていますが、見学でお勧めはArdbeg、Laphroaig、Bowmoreのうちだとどこが1番ですか?やはりそれぞれでしょうか?
よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
ポートエレンのまわりにはレストランやパブがありましたが、僕の宿泊していたボウモアからは遠いこともあり、夜の状況はすこしわかりません。ただ、遅くまでやっているお店は少なからずありました(だいたいホテルにレストランがついていて、遅くまでやっている印象です)。
また見学については全ての蒸溜所がオススメです。というのも、それぞれにポリシーがまったく違うからです。ぜひ可能な限りご見学を。