なぜ「綾鷹茶会」はここまで力を入れて茶の淹れ方や合組を体験させるのか?
先日、「綾鷹茶会」という、日本コカ・コーラさん主催のイベントに参加しました。このイベント、ペットボトル飲料の綾鷹にまつわるイベントなのは当然なのですが、実は「ペットボトルのお茶飲料を見つめなおす」という意味でとても素晴らしいイベントでした。
今回はイベントレポートの体をとりつつも、「なぜ綾鷹がこのイベントを開催したのか」というところに注力して考えてみたいと思います。
上林春松本店が全面バックアップ!
本イベント最大のポイントといえば、かの上林春松本店の店主、上林さんが直接講義を行ってくれたことです。この講義とは
・お茶の淹れ方実演
・茶葉認定式
・合組実演見学
の3つに大別できるわけですが、よくよく考えていただければわかるように、この3項目、どれも「ペットボトル綾鷹」のペの字も出てきません。体験の中心にあるとのはあくまで「茶葉」であり、お茶を上手に淹れることとペットボトルの綾鷹を購入することの間には、大きな隔たりがあるように思えます。だってお茶を家で淹れるようになればなるほど、ペットボトルを買わなくなる気がするじゃないですか。
しかしイベントが終わってわかったんですが、そんなことは無かったんです。
濃密すぎる体験に驚く
まず最初に行われた体験は、お茶の淹れ方実演でした。これは上林春松本店こだわりのお茶の淹れ方を学び、体験するもの。といっても気をつけるポイントは一般的な淹れ方と同じで、湯の温度と抽出時間をしっかりと確認することでした。
ただこのイベントで大事だったのは、そうした作法を聞く前と聞いた後で比較をさせてくれたことです。これにより、しっかりと測ってお茶を淹れることが大事であると、参加者には伝わりました。そう、同じ茶葉でも淹れ方によってその味が大きく変わるのです。
次に行ったのは、茶葉認定式と、それとセットになった合組と呼ばれる茶葉のブレンドの体験でした。まずは皿にたっぷりと盛られた5種類の茶葉に対して、直接触って感触や香りを確かめます。その上で、抽出を行い、その香りと味をチェックしました。これがいわゆる茶葉認定式です。同時に各茶葉の個性を自分の言葉でメモすることで、各自が5種類の茶葉に対して、それぞれの印象を持つことができました。
その上で、合組の実践です。各々が、5種類の茶葉を「春」をテーマにして好きにブレンド提案を行い、紙に書いて提出しました。イベントの最後には、上林さんがそのうちからいくつかを実際に合組し、淹れ、味見をさせてくれました。その上、今回参加者が企画したブレンドは、全て上林さんが合組のうえ、自宅に発送してくれるとのこと。そんな贅沢なことしてもらっていいんですか!?
なぜ、このイベントはここまでしてくれるのか。お茶の淹れ方を覚えて、茶葉認定式を模し、合組体験をする。あまつさえ上林さんにブレンドをしてもらったとしても、それがそのまま綾鷹の売り上げにつながるかといえば、そうとも思えません。
なぜ、なぜ?
その答えは、綾鷹の公式サイトの紹介文にありました。
綾鷹の味わいには、上林春松本店に伝わる茶師の伝統の技である「合組」、上林春松本店が認めた宇治抹茶を私用した綾鷹独自の「にごりの製法」、茶葉の品質と味わいの最終確認を行う「茶葉認定式」という上林春松本店の三つの茶師の技が生かされています。
ああそうか、このイベントは「綾鷹」を作るプロセスをみんなでなぞったんだな、と。
お茶飲料ができるまでのプロセスは、意識されていなかった
実は僕は、お茶農家の孫なんです。だから、お茶を栽培して収穫するまでのプロセスは良く知っているつもりです。
一方で、お茶飲料が、茶葉から製品になるまでのプロセスはまったく知りません。おそらく、ほとんど知られていませんよね。実験室みたいなところで、何度も何度もお茶を淹れて作り上げていく…みたいなイメージしか無いのでは?
でも今回のイベントでは、実際の「お茶づくり」の作業の一端を垣間見ることができたわけです。実際の合組作業を体験して、苦労、悩み所、こだわりも理解することができ、その難しさから伝統技能の奥深さを感じました。
また普段は絶対に行わないであろう、茶葉の認定作業に対しては、崇高さ、神聖ささえも感じることができました。こうして実際に手で触り、品評しながらお茶について深く考えるというのは貴重な体験でした。
加えて、にごりを意識してお茶を淹れることの重要さも学びました。当然ながら濁りが入るのは、最後の一滴のあたりです。この濁りが入るかどうかでお茶の味が大きく違うというのは、お茶好きなら誰でも知るところかと思います。ただし、こうやって改めて意識しながら体験するのは、非常に大事なことだなとも思いました。
こうして、綾鷹ができるまでのプロセスを、僕らは逆向きにたどっていたのです。
仮想・綾鷹から得た説得力
たかがペットボトル飲料、されどペットボトル飲料。上林さんの「完成したとき、驚異を感じた」というのはおそらく本音なのでしょう。あまりにも手軽なペットボトルのお茶が、このレベルまで来てしまった。しかもそこには、しっかりと受け継がれてきた伝統の技術が生かされている。それがイベントから十二分に伝わりました。
そう、一見して綾鷹とは関係の遠そうなお茶会だったのですが、その実は、仮想・綾鷹を作る作業を通じて、この味・完成度に至るまでの説得力を、僕らは得たのでした。
綾鷹は、凄い。では、どう凄いのか?今なら語れる気がします。他のお茶飲料でも同じようなことが行われているのかもしれませんが、いま、目に耳にしたことの説得力があまりにも凄まじくて、今は綾鷹が輝いて見えます。
ひとつの飲料を作るのに、そしてその魅力を伝えるのに、ここまでの労力をかけるのかと、お茶関係の家系だということもありますが、僕はなんだか感激してしまいました。
断言しますが、これはここ数年のイベントでも最高クラスの体験でした。こんなに素晴らしいイベントに参加させていただき、本当にありがとうございました。
>上林春松本店
http://www.shunsho.co.jp/
>綾鷹(あやたか)-急須でいれたような、にごりの旨み
http://ayataka.jp/