これだからフットボールはやめられない! プレミア最終節に寄せて #apfn
なんともすごい試合を見てしまった…。
プレミアリーグ最終節は、例年にないほどの混戦模様。しかもマンチェスターのライバルチームであるユナイテッドとシティが同勝ち点で並ぶという、完全な「異常事態」であります。もちろんファンにとっては(特に利害関係が無いものにとっては)これほど見ていて面白い状況も無いはずですが。
しかししかし、果たして最終節のシティは、フットボールという競技(イングランドに敬意を表して今日はフットボールと呼びます)の面白さが凝縮されたような凄まじく、そして素晴らしい、見る者全てが興奮し、語りたくなるようなそんな試合となりました。
ではどんな試合だったかを興奮そのままに追っていきましょう。ここにあるのは、90分から生まれた興奮だけです。そのままにパックしました。乱文乱筆誤字脱字、全てまとめてそのままお伝えします!ええ、しらふです!
傭兵部隊でも感じる「44年ぶり」の重圧
シティといえば、潤沢な資金を基に派手なチーム作りをしてきた、いわゆる「傭兵」的なチームであります。選手の選択こそ渋さが光りますが、その本質は「プロ中のプロたる仕事人が馴れ合い抜きで火花を散らす」チームであると言えるでしょう。勝てば官軍、負ければ崩壊という危うさを含んだ集団でもあります。
そんな彼らだからこそ、様々なプレッシャーをはねのけ、逆境をはねのけ、いまの姿がありました。一時は首位に立ちながらも、突然の不調から陥落、ライバルのユナイテッドに最大で勝ち点8をつけられた時は、誰もが諦め混じりのため息をついたものです。
しかし!そこは傭兵部隊。監督のマンチーニは規律違反により干していたテベスを復帰させ「なりふりかまわない」勝ち点奪取の姿勢を見せます。幸か不幸かテベスの活躍もあってシティは息を吹き返し、そしてユナイテッドとの直接対決を劇的に制し、まさか、まさかの最終節直前に首位という奇跡の逆転優勝まであと1歩と迫りました。
さて、そんなシティの最終節の相手と言えば、こちらも残留がかかって後のないクイーンズ・パーク・レンジャーズ。QPRと呼ばれるかのチームは、勝てば残留という最後の希望のため、まだホームで負けていないというシティの本拠地へと乗り込みます。またシティとユナイテッドの本拠地が同じくマンチェスターだというのが憎い。同じ街の相手が最終節の結果を競う相手だなんて、どれだけ幸せなことか!もし先の直接対決に、そしてこの最終節にシティがホームを使えなかったら、何かが違っていたかも知れない。運命はスケジュールが組まれた時点で決まっていたのかもしれません。色々な意味で。
蓋を開けてみれば、最終節はあきらかにシティの動きが堅く、いままでにない重圧にさらされている選手が目に付きます。傭兵部隊であっても、スタジアムから漂う「44年ぶりの奇跡を目に!」というプレッシャーを感じたのでしょう、いつものような「飄々とした」プレーは息を潜め、なにか単調な攻めが続きます。対するQPRも「いつか噛みついてやる」と目をぎらぎらさせながらシティの攻撃を跳ね返しており、これはただごとではない試合になりそうだという気配は、全ての目撃者が否が応でも感じたことでしょう。
トゥーレの「身を削ったプレー」から先制
得点がはいらず嫌な雰囲気が漂うシティに、追い打ちをかけるような「ユナイテッド先制」の報。スタジアムには不安な顔がよぎります。そんな閉塞感を打破するように、シティが先制します。足を痛めていたトゥーレが出した絶妙なパスからサバレタが気持ちの入ったシュートでQPRのゴールを破ります。GKの手をはじき、ポストに当たってはいるというこれまた劇的なゴールでありました。
しかし代償も大きかった。シティにおいて違いを生み出せる中盤のひとりであるトゥーレは、このプレーで完璧に足を痛め、交代となってしまいます。1点はとれたものの、シティは大きな痛手を負うこととなりました。まさか、まさかこの後あんなことになるなんて誰が予想したでしょうか。
時を同じくして、スタジアムには「(QPRの残留争い相手である)ボルトンがリード」の報が入ります。QPRとしてはこのまま負けては降格してしまうと言う、まさに崖っぷちの状態となりました。そのまま試合はハーフタイムに。このまますんなりといくはずがない、そんな予感は十分に漂いました。
まさかの同点ゴール、そしてシティにとって不運な退場劇
後半開始早々、ドラマが大層な筋書きをそろえて顔を出します。シティDF陣がまさかのミスをおかし、QPRに同点ゴールを与えてしまったのです。なんでもないクリアをミスするという、堅守のシティからは考えられない失点でした。当然ながらスタジアムには不穏な空気が増し、重苦しい表情のファンが顔をのぞかせはじめました。
そしてシティが怒濤の攻撃をはじめたころ!この試合を運命づける事件が起きます。プレミアを代表する悪童・バートンが、やってしまったのです。攻められ続けるイライラからか、挑発されたのか、ボールのないところでエルボーを見舞ってしまい、一発退場。カード提示されてからも蹴りをくらわすは、同じく悪童のバロテッリと一触即発になるわ、大きな混乱をスタジアムに与えて去って行きます。
この試合において、この退場こそが全ての鍵でした。シティにとっては幸運と思いきや、QPRに「守りきる」という意識を与えてしまうきっかけでもあり、「これはシティが苦しくなる」と思った方も少なくはないのでは。これはフットボールでは良くある話で、不利な方が退場した時、様々な勝負のあやが狂ってしまうものなのです。
いっぽうで、ドラマのはじまりでもありました。なんせ大混乱の中、5分ものロスタイムが生まれることになったのだから。このロスタイムなくして、伝説はうまれなかったでしょう。
とにかくこれでシティが攻め、QPRが守るという構図が生まれるはず、いや、確かに生まれていたはずでした。しかしそこはフットボール。何が起きるかわからないのがこのスポーツの魅力であるわけです。
信じられないゴールからQPRが逆転する
怒濤の攻めを跳ね返し続けるQPRは、たった1つのチャンスを迎えます。しかもバートンの退場により急遽ピッチにはいったトラオレが演出するというのだから、神様はよっぽどベタな展開がお好きと見える。とにかくトラオレの絶妙なクロスをマッキーがこれまた気持ちが入りまくったダイビングヘッドでたたき込み、まさか、まさかのQPR逆転というこれ以上はやりすぎだろうという舞台がそろってしまいました。
相手は1人少ない。
しかし逆転された。
ゴール前はガチガチに固められ。
頼みの綱であるトゥーレはすでにベンチ。
残りは25分。
どうする?どうする?
まさかまさかの出来事に、シティの攻撃が単調化するのは時間の問題でした。もちろん中央を徹底的にQPRに固められたこともありますが、中央を強引にこじあけるようなパスは息を潜め、サイドからクロスを入れては跳ね返されるという展開がずっと続きます。もちろんシュートも雨のように浴びせかけ、気がつけば20本以上のシュートをQPRゴールに飛ばしていました。しかししかし、こういうときに限って相手のGKがスーパーセーブを連発するというのも「サッカーあるある」であります。まさしくこの日のQPRキーパー・ケニーは信じられないようなセーブを連発し、シティの攻撃陣から次々と顔色を奪っていきました。
涙ぐむシティサポーター。
頭を抱えるシティサポーター。
やりきれなさをモノにぶつけるシティサポーター。
とにかくTV画面には、シティのシュートシーンとサポーターの悲痛なる顔が交互に映り、いったいこれが何の中継であるのかわからなくなるような、そんな状況にまで追い込まれます。ああ、シティファンなわけでもないのに、胃が痛いのはなぜ。シティファンでもないのに、奇跡の逆転が見たいのは誰。
と、ここでシティ監督のマンチーニは動きました。
不遇のゼコと追放寸前のバロテッリが奇跡を生む
まず投入されたのは、長身であり足下の技術も確かなゼコ。長谷部の元チームメイトであったこのボスニア代表は、ドイツを席巻するものの、タレント集団であるシティにおいてはいまひとつ目立てないでいました。来季の移籍願望などを語る、そんな選手でもあります。しかしシティはかまっていられません。長身の彼をターゲットマンとしてピッチへと送り込みます。狙い通り彼がペナ内にいるそのプレッシャーが、QPR守備陣の精神を少しづつ蝕んでいきます。
そして運命の分かれ道となったのが、これまた無意味な退場を繰り返したことにより、監督より失望の烙印を押されかけていたバロテッリ。奇しくも退場したバートンとはプレミアを代表する悪童としてある種の関係にあったと言えるでしょう。彼にとっては雑音を押さえ込むための最大のチャンスでもあります。
そんなバロテッリは、マンチーニの期待に応える活躍をします。単調な攻撃に終始していたシティ攻撃陣に変化をあたえ、「ドリブルで危険なエリアに侵入し、勝負する」という、守備陣にとって最も嫌なプレーをこれでもかと繰り返します。高さのゼコに加えスピードとテクニックのバロテッリをむかえたQPR守備陣が集中力を切らすのは時間の問題のように見えました。
しかし時間は無情にもロスタイムを示します。ただ、ここで先ほどの伏線が生きてきました。QPRに鉄壁の守備を敷かせる要因となったバートンの退場劇が作用し、ロスタイムが5分もとられることになったのです。サッカーの世界では、5分もあれば2点は十分な話。シティにとっては、これが最後のチャレンジとなりました。
すでにユナイテッド勝利の報はシティサポーターに伝わり、多くのサポーターの目が赤くなる頃、ついに、なんと、ついに、ついに、ついにスタジアムに歓喜が生まれます。
もはや何度目かわからなくなった、そんなCKをゼコが巧みなポジションどりからの豪快なヘッドでものにしました。押して引くという「プルダウン」のお手本のような動きで、おそらく疲れ果てて集中の切れたQPR守備陣からすれば、対応するのが難しかったのでしょう。いままでの鉄壁が嘘のように崩れ去った、そんな瞬間でした。
この勢いで1点は入ればシティのもの。スタジアムの興奮もプレッシャーも最高潮に達し、「まさかロスタイムに2点なんてベタベタな展開、ハリウッドだってやりませんよね?」というニヤニヤ顔な視聴者が増えたまさにその時!もはや伝説となるであろうゴールが生まれます。
1点入って集中が切れたのか、あまりにもボールに集まりすぎてしまったQPRの守備陣を横目に、バロテッリの見事なポストからQPR守備陣4人を出し抜いたアグエロが、本当にアグエロらしい「ひとりかわしてズドン」のシュートを決め、QPRの息の根を止めました。いや、情報とは無情なものです。このプレーの直前にライバルであったボルトンの自動降格が決まっていたこともあり、もしかしたらQPRの集中は本当に切れてしまっていたのかもしれません。それはユナイテッドにとっては「悪魔の情報」以外なにものでもなかったことでしょう。いや、もちろん彼らは何もしらなかったかもしれません。しかしそれにしては、あまりにも軽い守備であり、残留できる安心がすでにあったのではないかとしか考えられませんでした。その証拠に、このゴールの後ワンプレーの時間があったにもかかわらず、QPRは攻めませんでした。真実はわかりませんが、とにかく最後の最後でQPRの集中は切れ、シティからすれば見事な、QPRからすればお粗末なゴールが決まり、この伝説の試合は幕を閉じることとなりました。
不思議なことに、僕は最後の10分間、いてもたってもいられず、立ち上がって、うろうろしながら試合を見守っていました。おかしい。ここはスタジアムではない。でも、感じる。スタジアムの息吹を。おかしい、べつにシティには思い入れが無い。でも自然と立ち上がって、シティを応援してしまうのです。念じてしまったのです。逆転しろ、優勝しろ、フットボールの奇跡を見せてくれと!
フットボールの全てが濃密に凝縮された最高の試合
この試合にはフットボールの全てがありました。
- ホームとアウェーの絶妙な機微
- サポーターの悲喜交々
- 残留争いの底力
- 優勝争いのプレッシャー
- 退場による理不尽かつ奇妙な試合展開への推移
- 数的有利なチームが攻めあぐねるという見慣れた展開
- そしてワンチャンスをものにする数的不利側
- まるでリプレーのような単調な攻めに終始する不思議さ
- 交代させた選手が見事に活躍するという采配の妙
- ロスタイムに奇跡が起きるベタな展開
- キャプテン翼もビックリなロスタイムに2点
- しかも最後はいままでが嘘のような、わりとお粗末な守備
- 最後の笛まで本当に何が起きるかわからない
- そして一瞬たりとも目が話せない
- TVの前でさえ興奮を抑えきれない
- 下の階の人ごめんなさい
- 上の階の人ごめんなさい
と、とにかくまあ挙げていけば切りが無いほど、この試合はフットボールでした。ユナイテッドのファンの方には申し訳ないのだけど、これだけ素晴らしいお膳立てをして、こんな伝説の試合を見ることができたのは、間違いなくユナイテッドがいたからです。ユナイテッドが普通に勝ってくれていたからこそ、こんな究極の体験をすることができたのです。
まあFacebookページが先走って優勝っぽくなっているのはご愛敬でしょう。残念でしたね。
誰が責任とるんだろうw
とにかく!こんなに興奮する試合を見ることができたのは、フットボールファン冥利に尽きるわけです。ベタベタな展開なんて言いますが、「だが、それがいい」とだけ言っておきましょう。いいんです。ベタでいいんです。ベタでも僕らの心をつかんで離しませんから。
いまはただ言いたい。フットボールめっちゃ面白いぞと。こんなに刺激的なスポーツは他にないぞと。面白くて面白くて、こんな真夜中だけど書かずにはいられなかったぞと。
ああ、本当に良いものを見させていただきました。地球の裏側にたくさんいるシティファンのみなさん、ほぼ半世紀ぶりの優勝おめでとうございます。引き立て役となってしまったユナイテッドファンのみなさん、来季は香川を中心にリーグ王者を奪還してください。最後までドッキドキの展開をみせてくれたQPRのみなさん、最後の2プレーはいただけませんでしたね。さらりと降格してしまったボルトンさん、面白くしてくれたのはあなたたちでしたが、つまらなくしちゃったのもあなたたちでした。宮市出さなかった試合は全部勝ててませんよね。
なによりなにより、シティのみなさんには本当にすばらしい試合を見せてくれたことに、感謝してもしきれません。恐らくユナイテッドが優勝するんじゃこの興奮はなかったことでしょう。シティだからこそ、あのシティがこれだけ苦労して優勝したからこそ、この興奮があったと思えます。本当にありがとう!
あくまでフットボールにとって今日は通過点でしかありません。分厚い日記の1ページでしかありません。こんな伝説をさらに上回る試合が、これからも様々なところで生まれるはずです。より刺激的な試合をもとめて、フットボール中毒者はこれからもフットボールに一喜一憂し、踊らされ続けることでしょう。
フットボールに乾杯!ありがとう!そして明日からはJリーグに集中するよ!ああもう3時だ、風呂入らなきゃ。おやすみなさい!
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…あれ、ユナイテッドのページ、まだ直ってないやw このまんまいくのかなw
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