なぜ現場では「絶対」という言葉が口にされないのか
眠くなってウトウトして起きたら朝まで生テレビをやっていたのでもやしもんの10巻を読みながらダラダラ聞いていました。
そんな時、番組中で気になった場面が。原子力系学者の先生が「”絶対に”爆発はないんですね?」と詰め寄られてコメント出来なくなってしまった場面。これは相手が研究者という性質をわかった上で聞かなければいけない内容でしたね。なんせ研究者にとって「絶対」ということは自分の全否定になるのだから。
研究者に「絶対」は厳禁である
結論から言うと、研究者が「絶対です」という言葉を使うのは非常に希です。なぜなら100%だと言ってしまった瞬間に、研究が終わってしまうから。
たとえば今日の番組内での質問「絶対に爆発はありませんね?」に関して、もし99.99%爆発が無かったとしても、0.01%の例外がある限り、研究者は首を縦にふることができません。そもそも例外とはその名の通り例の外で、自分の想定の範囲外からやってくるものであります。すなわち、例外が無くなるということはほぼゼロ。結論として、100%ってことはあり得ないのです。
おそらく原発のようなリスク管理が必要な世界では、この小数点以下に潜む例外の数値をいかに突き詰められるか。それが肝なんだと思います。発生確率1/100が例外なのか、1/100000が例外なのか。きっとそういう世界なんでしょう。でもやはり「絶対」はないのです。
別に僕は原子力の専門家でもなく、しがない自然言語系研究者の落ちぶれですが、それでもこの鉄則はわかります。もちろん世間的には「絶対」という言葉を求めているのでしょうが、その言葉を導き出すのはまず無理ですね。だから「絶対ですね?」と聞いてはいけないのです。せめて「恐らく」だとか「ほぼ」だとか、少しの逃げ道を用意してあげてください。
「絶対」は罪なヤツ
「絶対」という言葉は罪深い。聞く側も答える側も、思考停止して安心したいからこそ「絶対」という言葉を求めますが、この言葉はそんなに簡単に扱えるものではないのです。とにかくそのことがもう少し世間に認識してもらえればなあと、元研究者の端くれとして思ったのでした。理系の人が「絶対だね!?」という質問に対して明快に答えることができなくても、許してあげてください。それが研究者にとってのアイデンティティーなのだから。
*もちろん人生には、「絶対」と言わなければならないシチュエーションがたくさんあることは承知しておりますので、念のため
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