ESシリーズを彷彿とさせるSONYフラグシップモデル NW-WM1ZとMDR-Z1R #音のこだわりの全て
ソニーがウォークマンとヘッドホンでフラグシップモデルを作った!ということで、ブロガー向けの体験会に参加してきました。場所は新しくGINZA PLACEに移ったソニーショールーム/ソニーストア 銀座です。
ESシリーズを思い出すよね
SONYのフラグシップモデル、とヒトコトにはいいますが、じつはあんまりイメージが沸きません。僕の中でSONYのフラグシップモデルといえば、何はなくともESシリーズ。もちろん今でも名前は残っていますが、90年代以前のそれを知っていると、ちょっと最近元気がないな…というのが個人的な感想。
ところが!今回発表されたこれら製品は、どうにも感じます、その頃の「におい」を。ちなみに「ES」とはExtremely High Standardの略だったと記憶しています。
この巨大で無骨なヘッドホンと、
ずしりと重量感あるウォークマン。これは、期待できる雰囲気しかないではないか。
こういうSONYが欲しかったんですよ。
イベントはまず先入観なく試聴からスタート。MDR-Z1RをNW-WM1Zに接続するという、とても贅沢な体験です。
NW-WM1Zは筐体に無酸素銅を惜しげもなく削り出して使っていて、ずっしりとした重さと、ひんやりとした感触が無条件に心をくすぐってきます。後のトークセッションにもありますが、持ち運ぶもの(ウォークマン)としてはギリギリ、ですよねこの重さ。でもそこで勝負しようって心意気がいいじゃないですか。ちょっとアホでしょ?くらいで開発してくれたほうが、僕には心地良い。
もはやこれは一昔前のセパレートコンポのアンプとD/Aコンバーターをコンパクトにまとめているような印象です。
気になる音質のほうですが、しっとりなめらか、トゲトゲしさとはさっぱり無縁のなまめかしい音がします。艶のあるというか。密閉型ヘッドホン由来の圧迫感がとても少ないのは気のせいかな?と思ったんですが、そうでもないようで、それもトークセッションにて。
たった7分間の試聴ではありましたが、これは確かにハイクオリティな音が鳴っています。自分の持ち込んだコンテンツで2時間くらい聞きたい、という欲求をおさえつつ、試聴を終えて本題のトークセッションへ。
開発者達が製品に込めた魂に触れる
今回のイベントは、各製品の開発に携わったエンジニアが4人も参加するという、大変に豪華なものでした。こちらWM1のメカニカルエンジニアを担当された石崎さん。
こちらハイレゾウォークマンの音響担当である佐藤さん。
手前がヘッドホンのアコースティックエンジニア瀬見さん。奥が同メカニカルエンジニアの尾崎さんです。
空気感を追求したMDR-Z1R
まず話はフラグシップモデルヘッドホンのMDR-Z1Rについて。音楽の感動を伝えるための「空気感」に拘ったというモデルです。
この空気感の話は音響の話ではたびたび出てくるもの。いわゆる一般的なCDは、音の周波数の中からいわゆる人間の「可聴音域」である周波数帯をざっくりと切り出して記録しています。どうせ人間には聞こえない音なのだから、記録されていなくても問題なくないですか?と思われるかもしれません。しかし実際にはそんなことなくて、聞こえていない音であっても周波数として(波として)体が感じているということなのです。たとえば低い音は、体で振動を感じることができますよね。極端な話、そういうことだと思ってもらえれば間違い無いです。
SONYの目指す空気感も同様で、ライブ会場でしか味わえない「立体的な音の体験」を空気感と定義していました。また、ダイナミックレンジも限界まで追求していて、微少な音である反射音などまでしっかり再現するというこだわりを持って開発をしたとのこと。
そもそもこのドライバーですよ。70mmって。このサイズでないと平面波が再現できないとのこと。マグネシウム振動板は30ミクロンの極薄素材。この薄さで破れずに成形するためだけに10年ほどかかったとか。なんという。これにより120kHzまで再生できるようになっているそうです。そこまで再生できたら、倍音なんかもちゃんと音が出て、生音の表現に強くなるだろうなあ。
なぜなら、この耳型のように、一般的な耳のサイズが60mm弱だからとのこと。耳よりも大きなドライバーユニットってことか!
そしてこのデザイン。これは僕にはとても身近な「フィボナッチ数列」のデザインです。フィボナッチ数列とは自然界に登場する「最も効率的」な配置で、たとえば葉っぱが最も日光を浴びられるようこのフィボナッチ数列に基づいた配置になったり、バラの花が大輪の花を開かせる時にもこのフィボナッチ数列的な形を見せてくれたりします。そんなわけで、よくよく見たらバラに見えますよね?そういうことです。これにより、開口部のサイズが均等にできたそうです。
ハウジングの設計も面白くて、絶妙な通気度を設計することにより、密閉時のあの「サー」という雑音を低減させています。これ、空間共鳴と呼ぶそうですが、本当にハウジングを装着するとあの音しないんですよ。不思議すぎる!
このあたりの物理的な設計に関しては、スタジオで聞いては分解調整、聞いては分解調整することで机上の理論だけでなく、人間の感性的にも最適なものを目指したのだとか。
なにかと気になる装着感についても、長時間ずれず、耐久性も追求した結果、メガネフレームに使われているβチタンを採用したそう。これはそのフレームを使ったメガネをかけている僕にとってはめちゃくちゃ納得感ありますね。
イヤーパッドにもこだわりがあって、理論上では左側の凹凸・カーブが少ないタイプが「最適」になるそうなんですが、実際に試してみると、右側のほうがいいと。そういうこともあって、人間の感性を信じて右側の形状を採用しているんだそうです。
前者が採用された形状、後者が理論上の最適形状です。かなり違いますよね。ここのフィット感が低音の再現性にも寄与するということで、思い切った英断が結果的には成功につながっている印象を受けました。人間がどう感じたか、って大事ですよね。
ちなみに写真のような大型のケースに納められているそうです。これは強そう。写真左下には愛用のスタジオモニターことHDR-CD900STが写っていました。音のクセが少なくて、長時間かけていても疲れない名作です。これは狙った写真なのでしょう(笑
再生能力を追求したNW-WM1シリーズ
一方でこちらNW-WMシリーズ。あくまでポータブルプレイヤーである「ウォークマン」として開発はしているものの、まったく音に妥協をしていない、名実共にフラグシップモデルです。
面白いのが、音の特性別に2つの素材別シャーシとして発売されたこと。
こちらに関しては技術的な話が多いので、スライド中心に。
なかなか面白いなあと思ったのが、アンプブロックと電源/デジタルブロックが分離されていること。お互いが干渉しないうえに、ヘッドホン出力直前までデジタルで信号が扱われるため、劣化やノイズ乗りの少ない音が実現できているのかな、と思いました。
そしてこれですよ。無酸素銅の金メッキシャーシと、アルミシャーシ。どちらも削り出し。もともとアルミで設計していたのだけど、無酸素銅で試しに作ってみたらバツグンに良いと。でも重いし、量産(素材の調達)や削り出しの難しさなどいろいろ問題も。とはいえやっぱりバツグンの良さだったので、作っちゃえ!ということで製品化にこぎつけたそうです。工場からはあまりの無茶なコンセプトに対し「量産しないなら試作してあげる」と言われていたそうで、いやあ、よく量産にこぎつけたものです。
あえて「アホですか」と言いたい逸話ですね。これはいい話。
こちら金メッキ前の本体。触るとあの独特の「銅のにおい」がします。まるで開化堂の茶筒みたい。さすがにこれはユーザーも気になるだろう、ということで金メッキすることが決まったようです。
右は削る前の銅の塊。約1.8キロあってこの手のひらサイズなのに大型ペットボトルの重さです。
基板の高さをミクロン単位で受け止めるためにこの微細な削り込みが実施されているそうです。筐体の素材が素材なので、ぎっしりみっちりの筐体であっても放熱についてはかなり有利だったとのこと。
ヘッドホンジャック部分はなんと4.4mm。ポータブルプレイヤーでこれは驚きですが、強度と音質追求のために妥協をしなかったそうです。すげー。
のりおのまとめ
値段もそうですが、この「悩むなら良い方で」感がものすごいですね。この小型化・軽量化の時代にこのサイズ感と重さだもんなあ。
でもこれってとても大事なこと。あくまでこれはフラグシップモデルです。車の世界もそうですが、フラグシップモデルが「チャレンジ」なくしてどうするの?ってことだもんなあ。
これは所有感がものすごいですよ。
ちなみに約500gの重さは「ペットボトルなら持ち歩けますよね?」ということで周囲を納得させた?とのこと。この重さでも衝撃耐久テストなどは一般的なウォークマンと同様のものを通過してきているそうです。でも、落とさないようにして使いたいですね(笑
ちなみにGINZA PLACEの新しいショールームでも、すでに筐体は飾られていました。すごい人気でしたよ。
かっこいいなあ。選ぶなら銅だよなあ。
うむ。
新しいソニーショールームに来られた際には、ぜひこのモデルを体験してみてください!
フラグシップモデル関連リンク
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