カズのフットサル代表候補選出に関して賛否両論あり。もやもやしたことを語ってみる #apfn
こんにちは、これでもJFA公認C級フットサルコーチで、いまだフットサルの「プレイヤー」でいたいと思ってがんばっているのりおです。今日はカズがフットサル代表候補に選出されたことについて、つらつらとまとめておきたいと思います。一言であらわすならば、自分の中でも「賛否両論」がうずまいています。
露出面での影響を考えてみる
最初に思いつくのは、やはり「露出」「注目度」に関する寄与です。カズといえば、やはり名実共に日本のサッカー界、いやエンターテイメント界まで巻き込んだ上での「レジェンド」と言っても過言ではないでしょう。なにより、彼には華があります。そんな彼がフットサルの代表候補に選出されてば、自然と周囲は「あのカズがフットサル代表に!」と書き立て、騒ぐのは目に見えていました。そして、実際その通りになっています。いままでFリーグの扱いなどほんとどしなかったようなニュースでさえ、カズが選出されたことを伝えたりしているわけです。日本のお茶の間における「フットサル」という単語の出現数は、飛躍的に増えたことでしょう。フジテレビで全試合を中継するなどというのは、今まででは考えにくかった話で、このカズ効果による盛り上がりが影響しているのは間違いないと思えます。
ただし露出がポジティブな影響をもたらすのは、その切り口や伝えられ方、そして受け止める箱があってこそ。では、今回の件に関して、その点はどうでしょうか。
「あのカズがフットサル日本代表候補に!」という報道は、
- 45歳でサッカー選手のカズでもフットサルなら代表になれる
という、少しあやうい認識を世間に与えてしまった面が否定できません。これは
- 45歳という年齢的なもの
- フットサル < サッカー というヒエラルキー的なこと
- そもそも日本のフットサルのレベル的なもの
- 代表のありかた
について様々な憶測を生んでいるはずです。
45歳という年齢的なもの
まず年齢的なもの。45歳という年齢を揶揄するわけではありませんが、フットサルほどの瞬発力を要する競技に対して、40を過ぎた人間が、あまつさえトップレベルの場に出てくるというのには少し疑問があります。カズがベンチの空気を暖める要因ならまだしも、ミゲル監督は「戦力としてみている」とのことでしたから、現実と選考との間にギャップを感じずにはいられません。
サッカーとフットサルのヒエラルキー的なこと
次にヒエラルキー的なもの。フットサルプレイヤーにとって、サッカーの下にフットサルがあるようなヒエラルキー構造は、ちょっと受け入れがたい面があります。もちろん人口や歴史、協会の構造などを考えればそう思われても不思議ではありませんが、両競技はまったくの別ものであり、それはフットサルをやればやるほど感じることが出来ます。県リーグをかじっただけの僕でさえ強烈に感じるのですから、サッカー・フットサルどちらかのトップレベルで活躍する人間であれば、なおのことでしょう。
もちろんサッカーでフットサルに適用できるような選手もいます。その昔、小野伸二はフットサル選手とも遜色ないようなプレーを見せてくれたことがあります。一方でフットサルからサッカーに通用した選手がごく希であることも確かで、ブラジルの伝説的プレイヤー「ファルカン」でさえ、サッカーでは活躍することができませんでした。
しかしこれは、フットサル<サッカー という構造的なものを表す事実ではなく、単に両者の競技的特徴の違いを表す結果にすぎないと僕は思っています。だからJリーガーがこぞってFリーガーになれるかといえばNoであるし、逆にフットサルではまったく通用しなかった選手がJリーガーとなる可能性だってあります。だから、両者にヒエラルキーのようなものを感じさせてしまうのは、すこし悲しくあります。
そもそも日本のフットサルのレベル的なもの
今回の件はそもそも日本フットサルのレベル的な面への誤解にもつながっていて、Jリーガーなら余裕で日本代表になれるのが日本のフットサルの現状…とは思って欲しくない気持ちがあります。これでカズがJ1のトップスコアラーだった…ということならわかるのですが、実際はそうでもないですよね。サッカーが急激にレベルアップを果たしたように、フットサルも急激なレベルアップを遂げようとしている現状に対して、水を差すことにならないか心配です。
選手達への影響を心配する
露出面での話は以上にして、露出以上に心配な面にも触れなければいけません。それが現役選手への影響です。あくまでフットサルに全てを捧げて代表入りを目指してきた選手、特に当落の線上にいたような選手は、今回のカズの代表候補入りに対してとても辛い思いをしているはずです。なぜなら、監督の判断として
- フットサル選手としての自分 < 簡易フットサル選手としてのカズ
と見える恐れがあるからです。
こうなると、選手としてのモチベーションは少なからず下がりますよね。もちろん圧倒的な実力があれば余裕で代表入りできたかもしれませんが、現実は現実です。「カズに負けた」という想いを抱いている選手は、少なからずいるでしょう。
だから僕は、ミゲル監督が「戦力として期待している」と発言してしまったのはミスだったんじゃないかなと感じるのです。「日本でのフットサルという競技の立ち位置をもうワンランク高めるため」と堂々と言ってしまえば良かったのです。TV中継を勝ち取るためでも良かったんです。戦力として呼ぶにはあまりにもミスマッチ。それが多くの人が感じる、正直な感想では無いでしょうか。仮に、カズがすばらしく戦術にフィットしたとしても。
森岡をもっとリスペクトしてあげてほしい
個人的なもやもやの中心は、森岡の扱いが大きく下がってしまったことと言っても過言ではありません。彼はペルー出身の日系で、12歳から日本に住み、もはや「日本人」以外のなにものでもありません。そんな彼は、フットサル日本代表に入るため、ペルー代表からの招集を断り(正確には試合に出ないことで日本代表としての権利を守った)、そして3度もの帰化申請を経て、33歳の今、やっと代表に入ることができました。実力は間違いなく、この年齢にして2011-12シーズンFリーグのMVPに輝いています。2007年のシーズンでもMVPですから、いかに長い間トップクラスの実力を保持してきているかは想像に難くないですよね。
そんな彼が、ここまで苦労して、こだわって日本代表を選んでくれ、そしてついに選出されたことは、もっともっと広く知られてもいいし、報道されても良いと思うのです。それこそ、カズのことだけではいけないのです。
僕はカズがとても好きだからこそ、この森岡に対する現状が辛い。フットサル日本代表の力を大きく高めるであろう彼の加入、そしてそのいきさつは、カズの件以上に知られて欲しいなと願います。
清濁併せ呑む強さが必要
思えばJリーグも定着前には芸能人的な扱いをされる時期もありました。普及とは、露出の裏返しであり、多少強引にでも露出しなければ普及しないのは確かです。あの黄金の時期があったからこそ、プレイヤー人口が激増し、いまの20歳前後の選手の育成につながっているのは間違いがないのです。だからフットサルも、様々な思惑がある今は耐える時期で、清濁併せ呑む強さが求められているのかもしれません。
今は自分の大好きな競技が地上波で見られることになった事実を喜び、そして自分が最も尊敬するスタープレイヤーが、仮にも「ワールドカップ」と名の付く場に立つかも知れないことを指折り数えて待つことが、求められているのでしょう。今回のワールドカップがあったから、未来のフットサルが飛躍した…そう、後から言われることを願っています。
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