切込隊長のサッカーの疑問に答える

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観戦初心者がサッカーの見所をわからない、というのは本競技における最大の悩みでもあります。そんな問題を 切込隊長が表面化してくれたのなら、答えないわけにはいかないじゃないか!ということで全てを中断してエントリ化。

組織的のほうが不利じゃない?

なんとかかんとかが組織的サッカーだから強い、って言うけど、一人のボールを持ってる人に組織的に動くってことは二人以上張り付くわけだから、相手より二倍消耗するから弱いんじゃないの?

2倍かどうかはわかりませんが、基本的にボールを持っていないほうがより疲れるのがサッカーです。というのも、常にリアクションを取らなければならないからです。例えば相手が方向転換したとき、リアクションは必ず相手よりも一瞬遅れますから、その遅れを取り戻すためには相手よりも速い速度でのダッシュが求められます。これを繰り返したとき、速いダッシュを多くしたほうがより疲れているのは明白ですよね。

組織的という言葉もあいまいなのですが、組織=人数をかける、という理解ではなくて、自分たちの長所を伸ばすように選手を組み合わせたり、相手の長所を消すようにマッチアップさせたりということ、すなわち個人の力を増幅させる、または個人の力を無効化させるためのものと考えていただいたほうが、正しいかもしれません。

ローテーションすればいいんじゃね?

最初のフォーメーションがどうとか書いてて、4-4-2とかいうけど、DFの人やGKがシュートしてもいいんでしょ? 消耗しそうなポジションはバレーボールみたいにローテーションすれば疲れないんじゃないの?

GKは専任制なので、ローテーションできません。基本的に他のポジションはローテーション可能です。大昔のサッカーではローテーションの概念がありませんでしたが、クライフという有名な選手を中心としたオランダ代表が、ローテーションの仕組みを取り入れた「トータルフットボール」というものをはじめて大ブレイクしました。

じゃあDFの選手が疲れてきたらまだ余裕のありそうなFWの選手とポジション入れ替えればいいのに…というのはごもっともなお話です。ここで重要なのは「個人の得手不得手」と「相手とのマッチアップ」です。

得手不得手はそのまんま、選手個々により得意なプレーが異なってくるため、ポジションを入れ替えたときにその選手の良さが出せるかどうか、限りません。わかりやすい例としては、コーナーキックの際にDFの選手が相手のゴール前まで攻め上がるケースがあります。これは、DFの選手は往々にしてジャンプ力と上背に優れていて、コーナーキックのボールをヘディングしてシュートするには最適だからです。

マッチアップは単純な話で、背の低い選手には背の高い選手を、スピードのない選手には速い選手を、というようにミスマッチする選手をぶつける戦略です。体力の有無よりもミスマッチを狙ったほうが効果的な場合も多々見うけられます。

なおもしローテーションが控えの選手と交代することを指しているのだとすれば、サッカーの公式試合は3人しか交代できない縛りがあるため、そう上手くはいきません。サッカーに近しいフットサルという競技は何度でも交代できるため、おっしゃるようなローテーションが行われています。

スペース空けてしまっていいのかね?

相手の空いているスペースにパスを入れて云々って言うけど、ボールに向かって常にスペースは閉じられているわけだから、相手の後方にスペースが空いてもそこに人を送り込んだら自陣のスペースが空くんじゃね? しかも、自チームがボール持ってるんだからスペース埋める奴が一人少ないわけだし

もう十分サッカーの見方を理解されているような気がします。まさにこれが真理で、得点を奪うためにリスクをかけるのがサッカーの面白さです。リスクヘッジと得点機会の確実さを常に天秤にかけているとも言えます。勝っている状況と負けている状況では、このリスクのかけ方がまったく異なるので面白いですよ。

ヘディングが相手に取られているんだけど

なんかGKがぽかーんと遠くに蹴ってみんなへディングしてるけど、ヘディング後とかって結構な割合ボールが相手ボールになっちゃうんだが、あれでいいのか?

DFの選手は相手「ボールを跳ね返す」という単純作業でよいところを、味方の選手は「DFと競り合った上でボールをキープするorパスする」という複雑なミッションをこなさなければならないため、そもそも困難の度合いが違っているのです。

これもリスクヘッジの話になりますが、相手にボールを奪われるのを嫌って、大きく蹴りださないゴールキックを選択するチームもあります。その場合は 大きく蹴りだして相手ボールになるリスク>自陣のゴールそばでボールをまわしていて相手に奪われてしまうリスク という考え方をしているわけですね。通常はなるべく自陣のゴールよりも遠くにボールを置くことが最もリスクが少ないと考えられるため、大きく蹴りだします。

ちなみに日本とカメルーンの試合では、本田が競り勝てる可能性の高い相手のところにわざとゴールキックを蹴って、本田に競り勝たせてボールをキープさせるという戦術を行っていました。

ちょ、ラリアットw

競り合ってヘディングしてるときとか、なんかラリアット食らわせてる選手がいるんだが、あれは戦術か何かか。

ラフプレーですね。(反則にならない程度に)腕を相手の肩にうまく乗せることで、相手の飛ぶ力を利用+相手のジャンプを抑制という技があるのですが、これが行き過ぎてラリアットになっているケースが多いような気がします。

本田△はどうすごいの?

なんか本田△とかみんな書いてるけど、本田が担当しているのは最終工程であって、道中を埋めてる選手のほうが偉いんじゃないの? やっぱり本田じゃなきゃできない何かがあるのかな。観ていて良く分からん。偶然そこにおっただけと違うの?

道中を埋める選手は重要ですが、本田△の場合は 味方→本田にあずける(体をはってキープ)→味方に返す(ここで本田ダッシュ)→味方がクロス→本田がそれにおいついてシュート みたいな工程をふんでいます。その上で最も難易度の高い最終工程を見事に完遂しているので、本田△は獅子奮迅の活躍なんですね。だから△です!

引きこもってればよくね?

とりあえず自陣でずっと横にころころ蹴ってて相手が警戒して出てこないまま90分過ぎればどんな強敵でも引き分けにできるんじゃないの?

ボールを触る瞬間が最も相手に奪われやすい瞬間でもあるため、ずっと横に蹴っているだけではいつか奪われてしまいます。これがバスケットで身長差50cmの相手が天高いところでパスまわし…という状況だったら別なのですが。

もっと体力温存できるんじゃないの?

ボールの回ってきそうにないところにいる奴はゴロゴロしながら体力温存しておけば「終盤、足が止まりました」とか言われずに済むんじゃないの?

サッカーは相手のマークをいかにはずすかのゲームでもあります。ボールのないところではボール保持側の選手が激しく動くため、どうしてもDF側選手はついていかざるを得ません。昔のサッカーではDFは守りだけ、FWは攻めだけという役割分担が明確だったため、例えば攻めているときはDFがサボったりしていましたが、現代サッカーは役割が不明確(ポジションはあくまで初期配置とマッチアップの指定に過ぎない)ため、サボることのできる選手が減っているとも言えます。

とりあえずこんなところで

ブラジルの試合が始まる前に何とか…ということで、早朝に急ピッチで仕上げましたため、ちょっとおかしいところなどあるかもしれません。疑問点や間違いなどはTwitterで指摘していただければありがたいです!

なお、Twitterのアカウントのほうでは日本代表の試合を中心に、初心者向け内容解説を行っています。試合中の合間にご覧いただければ幸いです。

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西部 謙司
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4 戦術は目的ではない。手段である。
5 戦術の変遷
4 出来の良い、読み物。
4 トータルフットボールの定義がよくわからなくなりそうになるが

(2010/06/29 13:40 に改訂を行いました)
(2010/06/30 03:47 切り込み隊長→切込隊長 に修正しました。気が付かなかった…)

著者プロフィール

Norio NAKAYAMA ブロガー、ライター、フォトグラファー、アドバイザー。 2000年よりテキストサイト、ニュースサイト時代を駆け抜けそのままブログへ。国内外への旅行やガジェット、日々の出来事などを紹介中。 旅と大宮のブログ「エアロプレイン」運営。Yahoo!ニュースさいたま市担当。三島市出身。アイラ島、青ヶ島上陸済。JFA公認C級サッカー/フットサルコーチ。チェコ親善アンバサダー。ScanSnapプレミアムアンバサダー。エスパサポ。中小や飲食マーケアドバイザーとDX支援、広報PR。お仕事相談はお問い合わせより。